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「んー…」
「どうしたんですか」
「あ、お帰り」
リビングのソファでゴロゴロしながら唸っていると帰ってきた弟が覗き込んできた
「比呂士…私には萌えが不足しているのだよ」
「は?」
また意味の解らないことを、と呆れたようにため息をつく小生意気な少年はこれでも自慢の弟の比呂士
私は普通目だと思うんだけど比呂士はお母さん似で美人さんだ、口を開かなきゃ目に優しいんだけどね
「また姉さんの変な性癖ですか」
「性癖いうな、萌えは必要不可欠であって私は百合じゃないし」
「私にもわかる言葉でお願いします」
さらっと黒い笑顔で言いやがってこの野郎…という気持ちは心に押し込めた
まぁ百合もどんと来いなんだけどね!
どっちにしても私は傍観者で居たいよ目に潤いを与える為にも!
そんな気持ちを叫んでも目の前の鬼畜眼鏡な弟は理解できないだろう
「比呂士の友達に男同士でキャキャうふふしてる子居ないの?」
「なんですかそれは…居るわけないじゃないですか…」
「えーじゃあ比呂士自身どうよ」
「論外です」
「ちぇー」
凄く残念だ、ウチの学年にもイケメンは数人いるのだが
どうやら普通に学校生活エンジョイしてるらしくそう言う雰囲気は醸し出していない
「そう言えば明日部活無いんだけど委員会の集まりで帰り遅くなるんだよね」
「そうなんですか?」
「うん、それお母さんに行ったらついでに比呂士と買い物して来いとか言われた」
「…わかりました、明日は一緒に帰りましょう」
「え、いいの?」
比呂士はなんだかんだ私の事はしょうがない姉だという認識をされていると思っていたのでごり押しすれば仕方なくと言ってくれると思っていたのだが
まさかさらっとデレが発動してくれるとは思っていなかった、どうした弟よ
「当たり前です、姉さんこそ一人で夜道歩くつもりだったんですか」
「え、なにこの紳士ほんとに比呂士なの?」
「失礼ですね、残念な姉さんも口を開かなければ美人なんですから仕方無いでしょう」
「毒舌すぎるもうやだこの子」
一瞬紳士に思えた自分が悲しい
それより弟からしたら私は美人らしいから顔面偏差値については説教した方がいいだろう
とりあえず明日は比呂士の部活友達に会うという本当の目的を
悟らせない様に遂行するのが私のミッションなのだ!我が弟の友達はいかなるものか!
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