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「すみませんそこのお方」
「んー?俺?」
「はい、テニス部の練習試合見学したいんですけど…駄目ですか?」
入ってすぐに見かけたその人は白衣に帽子をかぶったいかにも学校の先生ではなさそうな人を見て私はピンときた
ユウジから聞いていたあからさまに学校に不釣合いな顧問、そう聞いていたから彼を見た瞬間テニス部の顧問だと思った
「かまへんかまへん!お嬢ちゃんみたいなかわええ子なら大歓迎や!顧問の俺が許したる!」
そう言って先生は元気よく私を先導する、どうやら当たりだったらしい
練習試合をするなんてぼやいてたからどうしても見たくなってきてしまったけど…どうしよう怒られるかな?
でもこっそり見てれば大丈夫だよね?
そう考えているといつの間にかテニスコートについていた
するとタイミングが良かったのかユウジがコートで打ち合いをしていた、ダブルスと聞いていた彼が一人でコートで試合をしている
これはタイミングだけじゃなくて運までよかったのかもしれない、真剣な表情を見て思わずキュンとしていたところで隣に居た彼が叫びだした
「おー!珍しいこともあるやんけ!」
「オサムちゃんどこほっつき歩いとったんや」
多分ユウジの事だろうと彼の視線を見ながら思うとミルクティー色の髪を揺らしながら駆け寄ってきた子…この子が部長、かな?
無駄にイケメンでムカツクとか変な愚痴聞かさせられたから間違いないと思う
「すまんすまん人助けしとったんや」
「人助け?」
そこでようやく私に視線が集まった
周りの人も気づいたのかこちらに駆け寄ってくる
「オサムちゃんこの子は?」
「ああ見学者や!」
「見学?」
「はい、少しだけお邪魔します」
そう言って視線を戻したところで視線がパチリ
「なっ…ありがとう!?」
「あ…ゆ、ユウジ危ない!」
「は?…あだっ!!」
「ユウジ!」
私に驚いたのか打ち合ってる途中にもかかわらず視線をこちらに向けたままになったのが悪かった
こちらに視線を向けている間に撃ち返された球が見事におでこにクリンヒットしてユウジがひっくり返った
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栞