全国で負けたブン太を慰める
立海が負けた 

大きい声援の中でその事実だけがどこか遠く私の中でつっかえて取れなくて、どういう顔をすればいいかよくわからなかった
仮にブン太が試合に勝っていて、それでいて立海が負けたのならまた違っていたのかもしれない
だって、ブン太とジャッカルくんはいいコンビで、仁王くんと柳生君に負けない位のダブルスペアだった

それなのに相手はそれ以上のものを"同調(シンクロ)"なんて凄いものを見せつけられて…
しかも彼らの試合は相手のルーキーくんのための時間稼ぎに使われたようなもので、正直言葉が見つからない



「ブン太、二位おめでと」

「…おう」


負けたことはもう認めているんだと思う、だけど悔しい気持ちだって


「テニスは高校でもできるし、また次見返せばいいじゃん!」

「でも高校入ってこのメンバーでできるかもわかんねぇーし、出来たとしても3年後だぜ?」

「…それは、そうだけど」

「第一今しかできないことだってあるだろ」


その言葉が最も過ぎて何も言い返せないのが何故か悔しくてついつい棘のあることを言ってしまう


「でもさ、いつまでもそうやって嘆いてるのもどうかと思うよ」

「は?」

「終わったものは取り戻せないじゃん、ブン太うじうじしすぎ」

「…」


言った後にハッとした
…全国が終わってまだ数日も経ってないのにそんなこと言うのもどうかと思う
別に喧嘩がしたかったわけじゃないのに、私何言ってるんだろう。

慰めるどころか傷つけてる


「…ごめん、言い過ぎた」

「いやいいって、ホントの事だし」

「でも、ごめんね…そう言うことが言いたかったわけじゃなくてね」

「うん」


何だろうこれ、ブン太の事励ましたかったのに逆に宥められてる感じがする。


「あの…」

「ありがとう」

「…?」

「ゆっくりでいいから、思ってる事言ってみ?」


いつの間にか私よりも彼の方が大人になってる事に私が気づかなかったんだ…少し恥ずかしいな

そうだよね、思ってる事そのまま伝えればいいんだよね…変に考える必要なんてなかった


「…私、ブン太が笑ってる顔の方が好き」

「うん」

「あんまり、悲しい顔しないで…ブン太が悲しんでると、私も悲しいよ」


そう言うと壊れ物を扱うかのようにそっと抱きしめられた
しがみつく様に彼の服を掴むと回された腕の力が少しだけ強くなった


「ごめん心配かけて」

「いいの、私も悔しかったから、立海が、ブン太が負けたの」

「…ありがとなありがとう」


耳元で囁かれたその言葉に心が温かくなった 
まだまだ頼りないだろうけど、私はこの人の事をちゃんと支えていきたいなって再確認したから

これからも、一緒に歩かせてねブン太。



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