「私絶対別れないからね!」
そう釘をさすように言って音彩は部屋に戻っていく
「ほんと…あんなに俺の後ばっかついてきてたのによー…」
今は部屋に戻ってしまった音彩に、見知らぬ彼女の彼氏に言い聞かせるかのように俺は口に出してはぁっとため息をついた
(わかってる…俺はこの位置に慣れ過ぎたんだ)
目を閉じると瞼の裏に焼き付いている光景、思い出されるのは眩しい彼女の笑顔
従兄弟といっても小学校まではいつも一緒でお互いの家にもよく通い詰めてたし、まるで本物の兄妹みたいとまで言われた
俺はそれで満足してしまっていた、なのにどうして音彩の事に口を出すのか…そんなことわかりきってる
でもわかりたくない、気づいたらこの位置から抜け出せなくなっていた
彼女が引っ越した後もそれは揺るぎ無いもので、いままでも、そしてこれからも変わらないものだと思っていた
だけどそう過信していた付けが今こうして巡ってきた
音彩が誰かに恋をするなんて、俺以上近い場所に居ることを許すなんて思わなかった
「女々しすぎて笑えるな…激ダサだぜ」
でも今くらいは凹んでてもいいだろ?
勝手に好きになって勝手に失恋したんだからな
別に誰が見ていたわけでもなかったが俺は愛用の帽子で顔を隠し目を閉じた。
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