「よう迷子にならんかったな」


彼が合宿から帰ってきた翌日、彼の家の前についた私への第一声がこれだった


「ちょ、これでも私方向感覚良いんだから!」

「はいはい」

「むぅ…」


ポンポンと頭を撫でられると何も言い返せなくなったので少し悔しい
彼に促されて家の中に入ったがその瞬間謎の緊張が襲ってきた


「お、お邪魔します」

凄い上擦った声になってしまったのだがそんな私は悪くないと言い張りたい


「嘘やろ…?!」


そんな声が聞こえてきてふとそちらを見るとこれはまぁ美人のお姉さんがこちらを見てるではありませんか

――と思ったら思い切りこちらに駆けてきて、え!?


「ひ…ひーくんこの子は彼女なん!?そうなん!?」

「うぇ!?」


肩をがしっと掴まれたかと思うと凄い勢いで迫られた


「みゆ従姉さん、音彩が困っとるんでその辺にしといたってください」

「あ、つい迫ってもうた…大丈夫?」

「は、はい」

「玄関で何を騒々しい…て、あらやだ!」


光姉の次は光ママである、私はいつになったら玄関から上がらせてもらえるのだろうか


「ひーくん彼女連れてくるんやったら事前に言うてよ!」

「いや、別に報告とかいらんやろ俺ん部屋いくし」

「折角連れてきたんに独り占めするきかいな!」

「ええやろ俺の彼女やし」

「…」


さらりと言われた言葉が頭の中でこだましてようやく意味を理解した。
その瞬間急激に嬉しさと恥ずかしさが溢れた


「何今更照れとんねん」

「だ、だって…!」

「取り合えず色々話もしたいし中上がりや!飲み物何がええ?」

「ちょ、オカン」

「えっと、オレンジジュースありますか?」

「音彩もなに普通に切り返しとるんや」


この後も2時間はガールズトークになりずっと居間にいることになった
だけど怒らずに隣にいる間光はずっと手を繋いでてくれた

…そのことに対してもだいぶツッコまれはしたが


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