本当は…
「理由は聞かん、今まで通りでいい、けど俺にだけはホントのお前さんを見して欲しい」
「…無理、ですよ」
『私』は誰にも見せない、これは私の彼に対する罪滅ぼしでけじめなのだから
「私は…」
「奈々緒」
壊れものを扱うように優しく抱きしめられて、何も言えずにいると彼は小さく呟いた
「頼む…奈々緒の背負っちょるもん、俺にも背負わせてくれんか?」
「…理由は、本当に話せないのですよ」
「…プリ」
「訳のわからないものを背負うんですか貴方は…」
「…ピヨ」
「…馬鹿ですねあなたは」
その一言を言った瞬間に涙が零れた
今まで隠しきってきた『私』が表に出た瞬間だった
「二人の時だけでええ…ホントの奈々緒を見せんしゃい」
「…『私』は『柳生』とは違いますよ」
「それは楽しみじゃき」
「……我儘だって言いますし嫉妬だってします」
「嬉しい限りじゃ」
「仁王くん…雅治は『私』を好きでいてくれる?」
「当たり前じゃろ」
雅治は私の顔を包み込んで触れるだけの口付けをする
「好きじゃけ、俺の隣にいんしゃい」
「…うん」
一度目の告白は『柳生』で、二度目の告白は『私』へ向けられたもの
彼は解っていて、私をパートナーに選んだ。
私もわかっていて彼に関わった
いつかはこうなるんじゃないかと思っていた
離れなかったのは落ち着くからだけではなかった
きっと、彼に暴いて欲しかったからだ、本当の自分を…
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