放置部屋 | ナノ


そして君と同じ世界へ



「こんな状況で誰もいない所に何て放りだしたらそれこそこいつの心が折れちまう…だから、頼んだ」

奈々緒の戸籍とか細かい事は俺が修正しとく 
そういって神的なそいつは何処かに消えていった

「…奈々緒さん」

俺は静かに腰掛けて奈々緒さんの頭を撫でる 
すると涙が溜まっていることに気づいて小さく呼びかける

「…奈々緒さん、もしかして起きとるん?」
「…」

何も言わなかった、けど寝てる筈の彼女は小さく首を縦に振った
そしてゆっくり体を起こすとぽすりと音を立てて俺に抱きついてきた

「財前くん…私、全部っなくしちゃった…」
「奈々緒さん」
「落ちる少し前まで、皆で笑ってたのに…もう何もないっ」
「……っ」
「いってきますって言って家出てきたんだよ?…それなのにっ」

奈々緒さんが気にかけていたのは、自分よりも友達や残していった家族の事
自分が死んだというのに、残したものたちへの悔いを訴える彼女が余りにも健気で思い切り抱きしめる

「親不孝だよ、私まだ何も返してないのに…っ」
「我慢せんで、泣いてええんよ奈々緒」
「ふっ…うぇ…」

俺の肩に顔を埋めて小さく体を震わせ泣く

奈々緒さんは、何時もより小さく見えた
放っておけば消えてしまいそうで、大丈夫だと、俺がいると強く抱きしめる

「財前くん…ぐすっ」
「ん?」

暫く泣いている奈々緒さんをあやしていると彼女が小さく俺を呼んだ

「財前くんは…居なくならないでね、私もう心折れちゃいそう」
「アホ、一緒におるにきまっとるやろ」
「…ありがとう」

存在を確かめあうように、俺達は強く抱きしめあった
そして俺は思ったことを言うか戸惑ったが、素直にいうことにした

「奈々緒さん、不謹慎やけど俺今凄い嬉しいんや 寝なくても奈々緒さんに会えるようになる思うと
俺が奈々緒さんの立場でも泣く位ショック受けると思う、それが普通の反応や
でも何時までも引きずっとったら前に進めへん…俺が、奈々緒さんを支える
やから、奈々緒さんが立ち直った時には一番に心からの笑顔みせてな」

「…約束、だね」

体を少し離して、安心したように微笑みながら小指を差し出す
奈々緒さんの小さな指と俺の小指をそっと結ぶ

「嘘付いたら、君の事嫌いになっちゃうから」
「上等、俺約束破ったことあらへんし」
「凄い自信、頼もしいなぁ」

小さく微笑んだ顔を見たのが最後、気がつけば部屋になっとった


.

prev / next

[TOP]