あの後あの手紙の内容を否定しようと努力したが
どうしても皆が笑うとあの写真と文章が浮かび上がってきてしまう
その度に私は自己嫌悪と不安で頭を悩ませる 
やはり信じたい気持ちは強い、だけど私は昔からそうして裏切られてきた
今度こそと思う度にそれを踏みにじられるのだ 

だけど今度という今度は信じられる
明日ちゃんや柚ちゃん、テニス部の人達は絶対に裏切らない
そう信じようと改めて心に誓った翌日、手紙が入れられてから一週間後の事だった


「村井さん」

「貴方は、坂下…くん?」


偶々一人になった、その時に彼は話しかけてきた
放課後だったから、皆も家路や部活、バイトとそれぞれ思いをはせながら教室を出ていった
誰も居なくなったこの教室がやけに広く感じた


「正解、人の名前を覚えるのが苦手な君が良く覚えていたね」

「っ!?」


まるで褒めるような口ぶりで、優しい表情を向ける目の前の同じクラスの男 
今のやり取りだけで私は彼があの手紙を入れたんだと直感で感じ取った


「どうしてそれ知ってるの?…それに、あの手紙まさか」

「君の事は何でも知ってるから…手紙を入れたのも俺」

「な、んで…どうして!」


思わず叫んでしまった 
彼のあの一文と手紙にここまで感情を揺さぶられたのが悔しくてついその思いが爆発してしまったからだ


「どうして?あの手紙の通り、君は彼女達と縁を切った方がいいと思ったからだ」

「ぇ…」

「君は俺といた方がいいよ」

「どういう…」


意味が解らなくて後ずさろうとしたら逆に腕を引かれて抱きしめられた 
突然の事に体を硬直させると彼はふっと笑う


「怖がらなくていい、俺は君を裏切らないよ」

「何、言って…」

「あいつらは所詮集団で人間不信のお前を手懐けて遊んでるのさ」


違う、そう言いたかったのに声が出なかった 
喉が妙に渇き張り付いたように口が開かない


「君が居なくなっても、あいつらは悲しまないよ」


耳をふさぎたかった、それ以上聞きたくない。
彼が口を開くのが怖い、彼の言うことを鵜呑みにしてしまいそうな自分が怖い。

どうしてまともに話したことのない彼の言葉を信じてしまいそうになるのか、それがわからない 

誰でもいい、助けて…


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