財前光と365days | ナノ

放課後の教室が好きなのは私だけですか?



「ぜんざいさん」

そんな声が聞こえたのは綺麗な夕日が教室に差し込んでいる放課後だった

「財前くん、部活は?」
「今日図書委員の仕事あるんで」
「あぁ、そういうことか」

その言葉に納得すると彼は私の前の席に座った

「仕事はいいんですか図書委員さん」
「俺ぜんざいさんと話すので忙しいんすわ」
「なにそれ」

私が笑うと彼も笑う
夕日に照らされてなんだか幻想的だった。

美形はどんなシチュレーションでも輝いてるわホント

「ぜんざいさんはどないしたんですか」
「んー…なんとなくかな」
「なんとなく?」

私の言葉に理解できないと首をかしげる彼に私は苦笑した

「夕日が差し込んでる教室がきれいだなーっと思ってみてたらみんな帰っちゃったって感じかな」
「ぜんざいさん偶に変な行動起こしますよね」
「そうかな?」
「そうですよ」
「えー、変なことは言うけど変な行動は起こしてないよ」
「自覚無いのたち悪いっすわ」
「財前くんのいじわる」

むすっとして口をとがらせると彼はふっと微笑んだ、思うんだけど彼の笑顔ってなかなか貴重だと思う
クール系でいつも毒ばっかり吐いてる彼になつかれてる私って結構役得だよね

「そういえば話戻るけどさ」
「なんですか」
「放課後の教室ってホント綺麗だよね」
「まぁ、否定はしませんけど」
「だから告白に使かったりするのかな」
「は?」
「いや放課後の方がタイミングがいいのもあるだろうけどなんかこう、雰囲気っていうの?シチュレーション?」

一人で悩んでいると財前くんがもしかしてと口を開く

「ぜんざいさんて結構ロマンチストだったりします?」
「少しは拘るよ、女の子だもん」
「ふぅん…」
「聞いといてなんか冷めてるー」

まぁ彼が私の事を聞いても得しないのは知ってるけども、というか誰も得しないだろうし
そう思うと財前くんも誰か好きな人がいるのではないかと思い始めた 

好きだからこういうの気になったりとか…あるかもしれない

「財前くんって好きな子居るの?」
「え…まぁ、いないことはないですけど」

そういう彼に私の脳内ではキター!と叫んでいた

「ぜんざいさんはおらへんの?」
「恋したいけどねー…よくわかんないけどこんな場面で告白されたらドキドキするかもね」

そういうと彼は少し考えるそぶりを見せてから立ち上がった
そろそろ図書室に行くのかなと思ったら私の隣に来るものだから不思議に思って彼を見上げた

「財前く、んっ…!?」

突然の事に思わず目を見開いた、視界いっぱいに彼の綺麗な顔が映ってて、何が何だかよくわからなかった

「…俺、ぜんざいさんの事が好きなんですけど」
「え…」
「アピールしとるのに全スルーやし」
「ちょ」
「俺がぜんざいさんと話すときいつも変に緊張しとるの気づいとりました?」

そういって苦笑した彼の顔が今まで見た中で一番きれいに見えたのは、きっと彼の気持ちを知ったからで
私はそんな彼に瞬間的に恋をしたからなのではないかと、隔離されたかのような教室の中でただただ彼を見つめる事しかできなかった


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