財前光と365days | ナノ

満員電車乗ったことないけど乗ったらこうなってほしい



「うぅ…」 

―――ガタンゴトン 

大きな音を立てて揺れる電車の中で私は困っていた
何に困ってるかというと、女のよく遭遇する痴漢にあっているわけではない 
というか私に痴漢するようなやつはいないだろう
ならば何に困っているかというと…周りが身長高い人ばっかりなんです

(く、くるしっ死ぬ…)

ただでさえ身長の低い私がそんな人達に囲まれたら身動きすらも取れないわけで、帰宅ラッシュの電車に乗ってしまった自分が恨めしい

「っ!?」

そんな中で唐突にぐいっと腕を引かれた、
痛い位だったけどその場にいるの方が圧死しそうだったので一先ずは助かった

「ぁ、財前くん」
「大丈夫…でもなさそうっすね、ちっさいのにあないなとこおるからや」
「うるさい、私も好きでいたわけじゃないもん」

少し拗ね気味に言うとすんませんと笑いながら乱れた私の髪を撫でつつ直してくれた

「よくわかったね私があそこにいるの」
「ぜんざいさんの呻き声が聞こえたんで」
「…」

呻き声とはなんだ呻き声とは 
文句を言ってやりたかったがそのおかげで助かったのでこの場は何も言わないことにした 

――ガタン

「わっ」
「ったく、こない狭いところでこけそうになるてどんだけドジやねん」

そういいながらも私を支えてくれた財前くんは私を抱きしめるような…というかあれ、これ抱きしめられてる?

「ざ、財前、くん?」
「なんですか」
「いや、この体制がなんですかなんだけど」
「ぜんざいさん危なっかしいんでこれくらいしとかんと心配なんで」
「そ、そぅ…」

それにしたって彼に抱きしめられてるって思うとこんな状況下でも緊張してくる
もともと彼に好意を持っているからこそ嬉しくもあり恥ずかしくもある。
どうしよう変な汗かいてきたかもしれない

「ぜんざいさん」
「な、なに」
「もしかして…緊張しとるんですか」
「!!?」

ば、バレたー!!!!?
何故、顔は見えてないはずなのに!そんなに態度に出てたの!?
脳内でさらにパニックを起こしていると頭上で彼の笑った声が聞こえる

「ぜんざいさん急に体固まりすぎっすわ」
「う…」
「でもま、俺ちゃんと意識されとるの確認できたんでいいっすわ」
「え?」

今の言葉は、どういう意味?その考えは次の彼の言葉でかき消された

「痴漢て相手も合意の上だった場合お持ち帰り可能なんすかね」
「はぁ?何言ってんの?」
「つまりは、こういうことっすわ」
「!?」

スルリとスカートの中に手を入れられ太ももを撫でられた
驚いて見上げると財前くんは意地悪そうな笑みで私を見つめる

「ぜんざいさんお持ち帰りしたいんですけど」
「…それは、そういうことしたいから?」

少し不安でに言うと何の前触れもなく口づけられた

「ん!?」
「…こっちの関係になりたいんですけど」

雰囲気も何もない、ただの満員電車の中でどうしてこんなことになったのだろうか

「…返品不可だよ」
「ええっすわ、寧ろ永久保存なんで」
「馬鹿」
「馬鹿は禁句っすわ」

ほんと、雰囲気も何もない
だけど気持ちが繋がるのに場所なんて関係ないみたい

「ぜんざいさん、俺の彼女になってくれます?」

彼が耳元で囁いた言葉に私は小さくはいと返した


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