財前光と365days | ナノ

まぁ本棚に押し付けられ見下ろされたいですね



「白玉先輩」
「あ、財前くん」

最近よく聞くその声に顔を上げると部活中のはずの彼がヘッドホンを首からかけて現れた

「どうしたの、部活は?」
「色々あって部活できそうな状況やなくのうたんで抜けたんすわ」

「へ、へぇ…」

何があったのか激しく気になるけどあのテニス部の事だからまたありえないようなことをやらかしたのか
もしくは呆れるほど変なことをしたのかのどちらかだ、とりあえず先輩として抜けてきたことを注意するべきなのか
…そうは思ったが私もそんな生真面目な方ではないのであまり説得力がないため言うのは止めた

「で、財前くんはそんな部活を抜け出してなんでここに?」
「白玉先輩に会いに来たんすわ」
「私?」

彼の言葉に思わず驚く、そんな驚いている私を差し置いて彼は何事もないかのように頷いた

とにかく私は焦った 
だって、好きな人にそんなことを言われたら誰だって嬉しいし照れる
私の場合は勝手に片思いしてるわけだからそんなことを言われると変に勘違いしかねない

自分に違うと言い聞かせながら私は本の整理をして紛らわそうという決断に至った


「といっても私いろいろ作業してるだろうから財前くん暇になっちゃうよ?」
「俺やって図書委員っすよ、手伝いますて」
「でも財前くん今日お休みの日なのに悪いよ」
「俺が手伝いたいだけっすよ…駄目ですか?」

彼は純粋に言ってくれているようだったのだが私にはダメージが大きかった、なんだこのイケメンは

「じゃあ、お願いします」

そういうと彼はニッコリ笑う…思ったんだけど私結構笑った顔見せていただいてるんだが
あれ、財前くんてクールで大人っぽくて冷めてて…あ、全部同じ意味か。
兎に角めったにそんな顔しなさそうなんだけど…
あ、こういうのって偏見だよね、彼だって人なんだから普通に笑うよね、うん。

一人で自己完結したところで私は本を持って立ち上がる…すると持っていた本を全部ひったくられた

「先輩のほっそい腕でもっとったらひっくり返りますよ」
「な、そんなひ弱じゃないもん」
「ええですから…あ、これこの列の本すよね」
「あ、ほんとだ」

彼はほんと大人っぽい 
落ち着いた雰囲気だけでなく本当に空気を読んだり思考が大人びているのだ

「…と、届かないっす財前さん」
「…白玉先輩小さいっすね」
「うぐ…そういわれると意地でも入れたくなる」

そうは言うものの完璧に届いていない、しかし諦めるのもなんだか癪だと思っていると私の体がフワリと持ち上げられた

「ちょ、財前くん!?」
「これで届くでしょ?」
「う、うん…」

恥ずかしさを紛らわすように本をしまうとそっとおろされる
お礼を言おうと思って振り返るとなんだか財前くんが近い、思わず後ろに下がるが本棚にぶつかってしまった

「ざ、財前くん…」
「なんすか?」

そういいながら彼は私に顔を近づける

「顔が、ち、近いです…」
「わざと近づけとるんです」
「え!?」
「ふっ、先輩可愛すぎ」
「は…!?」

驚いていると財前くんが笑う、き、近距離で私へのダメージが…!


「なぁ先輩」
「な、に?」
「今…キスしたら怒ります?」
「なっ…」

驚いたところで私の言葉が続くことはなかった
彼の唇が私のそれと重なったから、彼が離れるまでがスローモーションに見えた…何をされたのか、理解することもできなかった

「…先輩?」

彼の顔を再び見て、私は再確認するとともにその場に倒れた
…正直彼がかっこよすぎで展開的にキャパオーバーです


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