一年くらい記憶ぶっとんだ財前くん
「っ…」
頭が痛い、目が覚めて最初に思ったことだった
ゆっくりを目開けると家族と先輩らの心配そうな顔が見えた
皆は口をそろえて良かった、気分はどうだと聞いてくるがいまいち状況が理解できない
「光…」
驚いたような声が隣からしてそちらを向くと涙をボロボロ流すぜんざいさんが居た
「ぜんざいさん?」
「ぇ…」
俺が呼ぶとぜんざいさんが信じられないというように目を見開いた
目が覚めたばかりの俺にはやはり理解が出来なくて
周りは不思議そうに俺たちを見比べている…なんだか皆少し大人びている気がする
「光…悪い冗談、でしょ?」
それでもぜんざいさんは信じられない…というより信じたくないといった様子で俺を見る
縋るように、震えながら
それよりも、彼女は俺の事を名前で呼んでいただろうか
「ぜんざいさん…何のこと言ってるんですか」
「…っ、なん、でもないよ」
気にしないで、目が覚めてよかったそう言って笑った先輩の顔は確かに笑っていたが、無理して笑ってることがなんとなくわかった
その後も家族や先輩たちにいろいろ話しかけられた挙句にここが病院ということまで発覚して起きて早々疲れた
どうやら俺は交通事故に合ってこの病院に運ばれてきたらしい
というか驚いたのは俺はほぼ一年間の記憶が飛んでるらしい、通りで皆大人びて見えたわけや
きっとぜんざいさんが俺の事を名前呼びだったのもその一年間で呼び方が変わっていたからなのだろう
でもそんなことより、あのショックを受けたような彼女の表情がずっと頭から離れなくて、何故か苦しかった
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