財前光と365days | ナノ

ずぶ濡れになると案外どうでもよくなる


絶賛家の鍵忘れ中で困っている私の後ろから驚いたような声が聞こえてきて我に返った

「ぜんざい…!?」
「あれ、光おかえり」
「ただいま…やなくてなんでそんなびしょ濡れでつったってるん!?」
「えへへ家の鍵忘れた」

驚きながら駆け寄ってきてくれる光にそういうとドアホとデコピンされた、今の結構痛かった

「…んな所突っ立っててもしゃーないから俺ん家来て風呂入れ」
「え、いーの?」
「このままやと風邪ひく」

そう言いながらバッグからタオルを出して私を頭をわしゃわしゃする
準備良いなーとか思ったけどよく考えたら光部活帰りだし持ってて当然か

「はよいこ」
「うん、ありがと光」

濡れてる私を傘の中に入れつつずぶ濡れてる私がこれ以上濡れない様に気にかけてくれた
私がこっちに転校してきてからは委員会とかの関係で知り合っていつの間にか付き合ってたって感じ
なんだか光の隣に居ると凄く安心するんだ、温かい気持ちになるっていうか 会いたくなったら光の家私の家の近くだからすぐ会えるしね


「お邪魔します…」
「ん、今皆出かけとるから気にせんと風呂入ってきぃや」
「う、うん」
「着替え義姉さんの持ってくる」

そういう私はダメだよ!と叫んだ

「勝手に使っちゃ悪いし」
「じゃあ電話…まぁええか俺ので」
「?」

いやなんでそっちの思考いったんだ?
良くわからないまま光に早く入ってこいとキレられて渋々お風呂に向かった ――



「…上がったよ光」

下着は乾燥機貸してもらって乾かした、流石にこればっかりは人の着るわけにいかないし
でも上に着てる光の服…大きすぎて上しか着てないんだよね、ズボンとかはいてもブカブカだし

そういうと笑われたからわざとらしく頬を膨らませると、光は笑いつつ自分の膝をポンポンと叩いた


「髪乾かすからここ」
「はーい」

なんだかんだ言って私の世話焼きたがる光は将来親バカになるだろうなとか思ったりしてる自分がいる
多分甥っ子の世話とかも光手伝ってるんだろう

「光乾かすの上手だね」
「そ?」
「うん」

痛くない程度にやんわりと髪を撫でるように乾かす光の手はどこまでも優しい、温かいし眠くなってくる

「ぜんざい、寝たらアカン」
「なんで…」

若干眠くなってる私はウトウトしながら返事をすると、光はため息をつきながら乾かし終わったらしくドライヤーを止めた

「あんなぁ、自分の彼女がそないな格好で寝とったら普通手出すやろ」
「光も手出すの?」

光に寄り掛かって上を見上げると不敵に笑った彼と目があった、ドキンと心臓が跳ねたのが嫌でもわかった

「ぜんざい次第」
「なにそれ」
「まぁぜんざいが本気で嫌やったら我慢するっちゅーこと」

なんだか今日の光は紳士だな、いつも突然で聞いてきたりしないくせに

「眠いからダメ、ぎゅー」
「…はいはい」

少し残念そうな声だったが表情はその返事がわかっていたというような感じだった
ベッドまで姫抱きで運ばれてそっとおろされる…力持ちだね光くんよ 
隣に寝転がった光に尽かさず抱き着くと抱きしめ返された


「おやすみ」
「ん、おやすみ」

毎日こんな風にくっ付いて寝れたらいいのに、なんて考えてる私が眠りにつくまでそう時間はかからなかった



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