財前光と365days | ナノ

にゃんにゃんお!!



初めて見た時の印象は正直冷めてるなと思った 
蔵や謙也としゃべっててもボケにまわってるところとか見たことないし

自分で決めたことはちゃんとやり通す芯の通った人で、実は結構優しい 
そんなところを知って私はいつの間にか彼が気になるようになった
まず意識し始めるとほんとに彼しか見えなくなった事に驚いた 
その後はもっと彼の細かい事にまで気づくようになった

たとえばちょっとした事でも今の仕草いいなとかさり気ない動作で相手を優先してるなとか

「ぜんざい、財前が帰ると決まって静かになるよなぁ」

その言葉に蔵のオカンスイッチが入った

「ホンマやで、ウチの子なんに…」
「白石いつ親になったんや」
「親みたいなもんやろ!今まで悪い虫がつかんように大事に大事に守ってきたんや!」
「…そりゃ鬱陶しがられるわ」

全くだ、と言いたい 

私は小さくため息をつくように首を振ってから窓の外を見る
彼が返っていく姿を窓から見てはまた心が締め付けられる

「ぜんざいは決まってその窓から見送りするなー」
「せやで、ちゃんと見えなくなるまで見とるんやで!」
「なんで白石が自慢気なんや」
「謙也いちいちうるさいわ」
「は!?」

言い争いをする二人の声を聴きながら私は静かに目を閉じる 
帰っていく彼の姿を自らシャットアウトした

いつだって私と彼の距離は一定のままだった でも、そんなの初めからわかっていたよ


私がどんなにあなたに愛想を振りまいたって彼には届かない、報われることもない――――


「お邪魔します」
「おーゆっくりしてきぃ」

――みぁ

「財前ーいつものお出迎えやで」
「ぜんざい!なんでや!なんでいつも俺より先に財前なん!?」
「ぜんざいは俺のが好きらしいっすよ」
「!!?」

私は猫だから、どんなにあなたに恋をしても届かないから 
報われないのならこの位置をずっと保っていたい

――にゃお 

私が甘えた声で鳴いて足にすり寄ると優しく抱き上げてくれる
最初は撫でてくれる程度だったけど最近ではこの動作が自然になってきた…進展なんて猫の私にはこの程度しかできないけど

「ぜんざい」

――にゃあ 


きっとこの位置は、私以外の誰も入れない位置だから 

だから、私はこの位置でいい


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