財前光と365days | ナノ

そんな君もカッコいいけど構ってほしいんです。



ゴロンとベッドに寝転んだ私の視界にはもはや見慣れた光の部屋が映り込む 
視点を少し上にずらすと彼の黒髪が視界に映りこむ
現在進行形で放置されてるけど私はこの空間が結構好きだ
彼がパソコンにかじりついてる時ってまた違った真剣な顔をするから
私はここでそんな彼の表情を独り占めできるんだから文句なんてない 

だけど彼を見つめているとふと名前を呼びたくなった

「光」

音楽も流れてたのにも関わらず彼はこちらを向いた 
小さく、ホント口籠った様に呼んだけど彼にはちゃんと聞こえていたみたい
彼は相変わらずベッドに寝転んだままの私を見てなんだと眼で訴えてくる 
私は彼をじっと見つめてもう一度呟く

「光」

なんだろう、なんか足りない。

こんなんじゃ全然呼び足りない 
とにかく彼の名前を連呼してみようか…でもうるさいっていわれそう

「ひーかーるー」

答えが出ないまま謎の衝動を収めるべく名前を呼び続けていると光は少し考えてからパソコンに向き直った
あ、シカトする気かこいつ 
そう思ったけど彼はそのままパソコンをシャットダウンした 

――本格的に私に構ってくれるらしい

「光」

もう一度名前を呼ぶと私の横に腰掛けてそのまま私の髪をくしゃりと撫でる

「光、髪ぐしゃぐしゃになっちゃう」
「もうなっとるし」
「嫌がらせはんたーい」
「名前連呼するぜんざいが悪い」

あれ、さすがにうるさいとは思ったけどこの流れで悪者になっちゃうんだ私
でも私はまだ呼び足りない、もっと光の名前を呼びたい
無性に呼びたくて仕方ない

「ひかる」
「…ぜんざい、どないしたん?」

いい加減名前ばっかり呼ぶ私を不思議に思ったのか顔を近づけて覗き込んでくる

「なんもないよ?」
「そういう割には不安そうな顔しとる」

どうやら名前を呼び続ける私を不思議に思ったわけではなく、不安そうな顔をしていたから心配になったらしい

「そんな顔してた?」
「してた、捨てられた子犬みたいな」
「なにそれ」

私が笑うと彼も笑ってお互いのおでこをコッツンと合わせる、そうすると名前を呼んだ時より何故か満たされた感があった


「ぜんざい」
「ん?」
「ぜんざい」
「え、何?」

今度は彼が名前を連呼し始めた…結構対応に困る

「…なぁぜんざい」

何回か呼ぶと満足したのか今度はちゃんと私に問いかけてきた

「なぁに?」

そのまま彼を見ると相変わらずゼロ距離のままなので視点が定まらない、けどなんとなく見つめ合ってるのがわかる

「もう寂しくない?」

光は、私より私の事を知っているらしい。
言われるまで寂しかったなんて気づけなかった
でも言われてみればあぁ、たしかに私は相手にされなくて寂しかったんだなと思う

「寂しくないよ」


これだけ君とのきょりが近いんだから



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