財前光と365days | ナノ

巻き髪ガールズとヘタレチキン、時々黒髪ピアス


「あんた財前くんのなんなん?」

いや、あなたたちが誰ですか 
とは思うが口に出せない私はやっぱりチキンなのだろう

というか涙でそうなんだけど、メンタル弱い私に寄って集ってなんなんですか先輩たち…
プルプルしている私に気づいたのか先輩たちは更に調子に乗り出した


「大体その顔で相手にしてもらえると思っとるん?」
何の相手ですか、というよりケバイあなたよりましかと

「っちゅーか後輩の癖に財前くんに近寄るとか調子乗りすぎやろ」
いや同じクラスの隣同士なんですけど、調子に乗るとか言う以前の問題

「これに懲りたらもう関わろうとせんことやな」
いやだから隣なんですってば、というよりあんたらに私の人間関係とやかく言われたくない


あぁ言われっぱなしとか悔しい、そう思っているのに動かない自分の口が恨めしい
ただ涙が出そうで少し震えてる体だけど、じっと耐えて先輩たちから視線を逸らしていないことが今の私の精一杯の反撃

「じゃあ俺が関わろうとするのはええんすかね先輩たち」
『!』

その声に皆が驚きを隠せない先輩たち、私もだけど

「ざ、財前くん!?」
「ど、どうして…!」
「なんでって俺ぜんざい探しに来ただけなんで」

彼がサラリというと先輩たちの視線が一斉に私に向く、彼は竦みそうになる私の前に立ってさり気なく背に隠してくれた

「先輩ら面白い趣味あるんすね、今時呼び出して集団で囲むとか」
「そ、それは」
「先輩らが何してもどうでもええっすけど、ぜんざい巻き込むのは許しません」

その声のトーンは先ほどよりも低く先輩たちの表情が強張る

「ぜんざいは俺のなんで、呼び出し禁止っすから」

そういった時見上げた彼の顔は不敵な笑みを浮かべていたが、目が全然笑っていなかった
何も言い返せない先輩たちをその場に残して私は彼に手を引かれるまま大人しくついていく

「…ぜんざい」
「あ、何?」

唐突に名前を呼ばれて思わず上擦った声が出る。私たちの歩みは止まらないまま


「ぜんざい、すまん」
「光くんが謝ることじゃないよ?」
「いや、未然に防げなかったんやから俺の責任」

そういうと彼は重たい鉄のドアを開けた 

――屋上だ


「ぜんざい」

呼ばれて彼の傍に行くとそのまま両肩に手を置いて引き寄せられた

「俺遠まわしに言うのとか好きやないから率直に言うで」
「う、うん…?」
「気づいたら好きになっとった、俺と付きおうて」
「へ?」
「ぜんざい放っておいたら心配でたまらんわ、ヒナ鳥みたいで」

ヒナ鳥とはなんだと怒るが彼はいたって真剣にさっきの場面が”親とはぐれて不安でプルプル震えてる様”に見えたらしい、何処がヒナ鳥なんだ

「気持ちは嬉しいけど、私光くんのことそういう目で見たことないし…」
「これから見てくれればええよ、俺はぜんざいを守りたいだけやし」

どうやら私が返事をしてくれるまで守ってくれるらしい
というか守るって…さっきみたいなのから?

よくわからないけど今日から親鳥替わりの財前くんについていこう

…あれ、なんか違う?


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