財前光と365days | ナノ

夏の暑さ対策にご協力を


「ぜんざいさん」

眉間をぎゅっと寄せた我が後輩である財前光くんとは白石くんと忍足くんを通して仲良くなった
彼は図書委員なので図書室に度々出現するのを見越して私も遊びに来たってわけだ
そして彼が今なぜそんな表情をしているのかは聞かずともわかる

「なーにー」
「なんで手握っとるんですか」

そう、私が彼の手をぎゅっと握りしめているからだった 
カウンターを挟んで彼の手をただぎゅっと握りしめている

「だって財前くん低体温で気持ちいから」
「……」

ただでさえ梅雨でじめじめしていたかと思うと晴れの日は凄い暑い、
日差しに当たらなくても干乾びちゃいそうになる 
そんな中で私は唯一の対策を見つけたのだ

彼が低体温だと知り出来心で手を握ってみるとあら不思議、なんでこんなに気持ちいいんだろうか

「財前くんこのまま私の熱吸収してよ」
「…ええっすよ」
「え、いいの?」

てっきり何言ってるんすかとか嫌っすわとかさらっと言ってくると思ったので、言ったことも冗談半分ですぐ手も放すつもりだった
その手を突然引かれてカウンターに前のめりになってしまったのと同時に視界が彼の整った顔でいっぱいになる
あ、唇も若干冷たいんだと思ったと同時に今しているのがキスだと気づいた瞬間全身が熱くなった

「え、ちょ…」
「熱、逆にあがったんとちゃいます?」
「ざ、財前くんのせいでしょっ!」

そう叫ぶが当の本人は可笑しそうに笑うだけ、くそうかっこいい

「ま、とりあえず冬になったら俺が先輩カイロ代わりにするんで」

そんな彼と付き合い始める事になるのは数十秒後の話


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