東雲夕様より財前夢
≫戸惑いと幸福感
「・・・何しとんの?」
朝。
教室に入ると、まず最初に目についたのはクラスでも仲の良い友達。
挨拶を返して席に向かうと、次に目についたのはこの間晴れて恋人同士になった彼―財前光だった。
「なんか、こう、朝の疲れを回復・・・出来ひんな」
「ならわたしに座らせろや」
「ええやんか母ちゃん。あと十分寝かせてや〜」
「アホか」
数日前。
「あの、さ。なんか結構前からアンタの事好きになってもうたんやけど・・・わたしと付き合ってください!」
「おん、ええよ」
「え、軽っ!」
「え、どこが?」
「せやかてわたしの精一杯勇気を振り絞った告白を二つ返事で・・・」
「は?ほんなら『スマンけど、お前の事そんな風に意識したことないからようわからんわ。考えさしてもろてもええ?』とか言っとくか?」
「ごめんなさい。わたしのチキンハートにそないな負荷かけんといてください」
「せやったらおとなしく受けとけや」
「はい、何卒よろしくお願いいたします」
「なんでいきなり標準語やねん。ま、よろしゅう」
こんな感じで付き合いだしたはいいが、この様子じゃ関係の変化は望めへんなと若干諦めかけとった。
それなのに、次の日から今日まで、毎朝わたしの机でぐでぇーんと寝ている。
いや、正確には目は覚めているが、チャイムが鳴るまで伏せたまま顔すらあげない。
一時期ミーハーなファンからの視線がきつく内心ビクビクしながら生活していたのも、今ではいい思い出だ。
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