私から緋浪様へ財前夢




あっちへこっちへと目まぐるしい作業にようやく一息入れられたのは部活が始まってから30分もたった後だった


「相変わらず疲れる…」

「なら俺専属のマネージャーでええやん」

「あ、光くん」


ベンチに座っていると首からタオルをかけた光くんが私の隣に座ってきた


「相変わらず緋浪はあっちこっち行きおって」

「そりゃマネージャーだしね」

「アカンわ、こない危ない人たちの中で俺の見とらん隙に襲われるんやないかて気がきやないわ」


そう言ってギュッと抱きしめてきた
いきなりだし、皆が見てるから恥ずかしくて視線を彷徨わせる


「ぁ、ぅ…ひ、光くん」

「なんや」

「恥ずかしいよ…」

「ええやん、見せつけとけば」


そうは言われても…!
見せつけるとか無理に決まってるじゃないですか光さん!

恥ずかしくて内心パニくっているとそれをお見通しだというように光くんが笑う


「緋浪かわええ、むっちゃ癒される」

「うー」

ぎゅーっとされながら頭をポンポンと撫でられているとあー!と大きい声が聞こえてきた


「財前!何いちゃついとるんや!」


その声に思わずびっくりして光くんにぎゅっとしがみ付く


「…ホンマ謙也さんは空気読めない人ですね、一瞬感謝しかけてしもたけど」

「はぁ?!」

「毎度毎度俺の癒しの時間邪魔せんでくれます?」

「せやな、すまんかった…やないわ!部活中にひっつくなや!」

「あーあー聞こえないっすわー」


と言いつつ更に抱き締める力を強められた
ちなみに私は恥ずかしいから顔が上げられない状況だ


「ほら、謙也さんのせいで緋浪がフリーズしてしもた」

「…俺のせいとちゃうやろ」

「まぁ今回は財前が悪いわなー、ほらはよ離れ」


四天テニス部のオカn…ではなく部長の白石くんの声が上からしたかと思うとべリッと光くんから引きはがされた


「ぁ」

「部長の鬼」

「俺かていちゃつきたいの我慢しとるんやから財前も我慢しぃや」

「それなんかちゃうやろ…」


ズルズルと白石くんに引き摺られていく光くんに苦笑しつつもちょっとだけ残念な気持ち
いつも彼のペースに巻き込まれているけどやっぱりそれも悪くないと思っている自分がいる



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