丸井と彼女と元彼1




『話があるんだ、放課後屋上に来てほしい』


送られてきたメールを見て私は目を疑った
そのメールを送ってきたのは私の中では忘れたいけど忘れられなくて困っていた存在だった…否、ようやく忘れかけていたのに古傷を抉られた気分だ
どうしようなんてぐるぐる考えていたらいつの間にかその時が来てしまった



「茜ー部活行こうぜ」

「…ブン太」


そうだ、私の今の彼氏はブン太だ。

彼に何を言われようと振ったのはあっちだった訳だし、付き合い始めたばかりだが今は彼を好きだった以上にブン太の事が大好きだ
と言うか今更話ってなんなのだろう、吹っ切れたところで再び疑問が出てきたがそれはいけばわかるだろうと気持ちを切り替えた


「ごめん、ちょっと用事あるから先行ってて?」

「?おう」


いつもなら何の用事なんだとか聞いてくる彼も珍しく素直に引き下がってくれた…ありがたいことだ
これで元彼に呼ばれてるなんて言ったらきっとブン太怒るだろうし… 

私は足早に屋上に向かうと既にそこには彼がいた


「あ、茜…」

「久しぶり、呼び出したりしてどうしたの?」


私の顔を見て安心したような表情を見せた彼だが私の質問を聞いて表情を曇らせた
だけどやがて表情をキッと変え真剣な表情でこちらを見据えてきた


「茜、俺あれからいろいろ考えたんだ」


あれから、というのは多分別れた後からという事だと考えられる


「あの時はお互いギクシャクしてて自然消滅みたいな形になって…」


そして私は振られた。
私も彼との距離を感じていたしあんなに好きだと思っていた気持ちが冷めてしまっていて驚いた位だった


「でも今は後悔してる…お前を振った事」

「え?」

「お前が傍に居なくなってわかったんだ…お前の存在が俺の中で当たり前になってただけなんだって」

「…」

「勝手だってことはわかってる、けど俺はまだお前の事が…!」


勢いよく言おうとする彼の顔が見れなくて、そっと手を前に出した


「…それ以上は言わないで」

「茜、」

「私は、今の彼が貴方以上に好きなの…!」


震える声でそう告げる彼は信じられないと言った表情をした



.