日吉と誕生日






「若ー!」


駅でバスを降りてすぐ近くの場所で壁に寄り掛かる彼の姿を見つけて駆け寄る 
久々に見る変わりない姿につい笑みがこぼれた


「久しぶり、元気だった?」

「ほぼ毎日チャットしてるだろ」

「そうなんだけどさ、やっぱり顔みたいじゃん?」

「…当たり前だ」


その返事を聞いて私は再び笑った 微妙に遠距離恋愛な私たちはこまめに会えなかった



「昨日来れなくてごめんね」

「その事はもういい」

「でもごめんね、ちゃんとお誕生日の日に来たかった…」


お互いに暇な身ではない、お互いの都合が合う今日会おうという話は前々からしていた
誕生日の日には電話でおめでとうと言ったがやっぱり直接会って言いたかった


「今回も明日の夜帰るのか?」

「うん、それまでは居られるよ」


明日は平日だがお互いの学校の休日が重なるといういいタイミングだった 
でもいつもと居れる時間は同じくらいで出来ればもっと一緒にたいと思う


「寒そうだね」

「外で待ってたからな」

「そんな貴方に誕生日プレゼントのマフラーを授けよう」


きっと若の事だからマフラーしてこないだろうと思っていたがそれが当たった
寒そうにしている彼の首にマフラーをかけてあげると少し意外そうな声を出した


「…もしかして手編みか?」

「え、わかっちゃった?」

「ああ…上手だな、意外な特技だ」

「な、意外って失礼だよ」

「手先の不器用な茜が良くここまで綺麗に編めたものだな」

「そりゃ練習したからね!」


自慢げに言うと褒めるように頭を撫でられたのでちょっと照れくさくなった


「若」

「どうした」

「…一日遅れだけど、お誕生日おめでとう」

「ああ」



そう言うと若も心なしか頬が赤く染まっていたような気がして
私は緩みっぱなしの頬を引き締めることなく彼の腕にぎゅっと抱きついたのだった


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