日常と仁王





「まーさーはーる」


屋上でゴロリと寝転がってぼんやりしている彼の顔を膝立ちで覗き込んでやるとパチリと目があった


「茜」

「なにしてんの?もう授業始まってるけど」

「茜こそ授業はじまっとるのにないしちょるん?」

「いやあんたの捜索に駆り出されたんだけど」

「ああ」

彼女だからというのもあってか何故か私が彼の捜索を任命された
全く彼女だからといって彼の放浪癖を把握しきるのはまだ難しいよ


「…」

「な、なに?私の顔に何かついてる?」

「や、この光景いいなとおもってのう」

「光景?」


私はまだ寝転がった彼を上から覗き込んだまま、彼は寝転がったまま


「雲一つなくてつまらんと思っとったき、茜が加わったことでいい感じになった」

「意味わかんない」

「俺だけわかっとればいいことじゃ」

「変な雅治」

「茜は可愛いのう」

「意味不明」


こんなやり取りは日常茶飯事、彼が可愛いとかじゃなくて本格的に意味不明なことを言うのもいつもの事だった


「なぁ茜」

「なぁにー」

「好いとうよ」

「…私も好き」


こうなると私の負けで、気づけば彼の隣に寝転がっていた
今まで彼がひとり占めしていた空を見つめる


「真っ青だね」

「じゃろ?」

「雲欲しいね」

「なー」


こんなやり取りをしていると今が授業中だとか、探しに来たとかどうでもよくなってしまう

結局私は彼には甘いのだとつくづく思い知ったのは、2人してサボったことで先生に怒られた時だった



.