ずれてる仁王と勘違い



※独白



私と雅治はいつも一緒だった 
小さい頃からずっと一緒に居る所謂幼馴染でそれは高校生になっても変わらなかった
私は自信があった、ずっと私の隣に居てくれるという自信が 


でも違った 
私が思っていただけで彼は私の事などその程度にしか考えてなかった
そして彼に彼女が出来た時に初めて気づいたのだ 
私はいつの間にか彼を好きになっていたと 
幼馴染の位置に勝手に優越感を覚えていたと
人は失くして初めて大切なことに気づくというがまさにその通りだ 
私は彼が好きだ 
でも気づいたところで全てが手遅れ、私には何もできない


そして彼と行動しなくなって数日、違って見えた景色は逆に清々しい位だった 
さらに数日すれば私にも彼氏ができた、相手はバスケ部の部長さん
普段はおっとりとした優しい彼だが時折見せる頼れる男らしいところにきゅんとしたりする
雅治とは全く違う性格の彼、だから新鮮で優しい彼にどんどん惹かれていった 

そこでようやく雅治に抱いていた感情と違うと気づいた
きっと雅治に感じていたそれは兄弟などに感じるそれだ
私は一人っ子だから無意識に頼れる彼を兄のように思っていたのかもしれない
そう気づいてから更に彼氏に対する思いが強くなった 



そして彼と付き合い始めて更に数日後、学校で雅治と久々に鉢合わせた
彼に彼女が出来てから私が避けていたのだが
私に彼氏が出来てからは気まずくなることもないと吹っ切れたおかげだった
だけどそれが間違いだったと気づくのはこの後だった 
雅治は何処か怒ったような表情をして私の手を引いた
少し強引なそれに私は声を上げたが彼は何も答えてはくれなかった 

無理矢理連れてこられた屋上で何故か怒られた
その言葉の意味を私は少し考えた 
でも私は彼に咎められる理由がわからない
それを伝えると雅治はもっと不機嫌そうになった 
何故かそれが怖くて後ずさると背中が壁に当たった 
前に雅治、後ろに壁…逃げ場はない

どうしようかと思ったところで雅治が口を開いた 

別れろ 

そう言ってきた 
それを聞いた途端に私は恐怖を忘れ苛立ちが募った
何故雅治に私の恋愛に口出しされなくてはならないのだと 
彼は怒った 
私にはその理由がわからない、わからない
すると突然屋上の扉が開いた 
現れたのは彼氏だった 
私が連れて行かれたのをクラスの人に聞いたらしい

彼はいつもの穏やかな表情を一転させて怒ったような表情で雅治と睨み合う 
彼は私を助け出してくれ、そのまま屋上を去った
その時雅治の様子を私は伺った 
取りあえず私を落ち着かせるためにと保健室に連れてきてくれた 
いつもの優しい表情で大丈夫かと聞いてくれた
その声の優しさに涙が出た 


そして私は思う

"何故雅治は泣きそうなほど悲しそうな表情をしていたのだ"




.