引っ込み思案と芥川
「うー…」
疲れた、と言っても精神的にだけど。
思わず頭痛を覚えつつも私は中庭の一番端の木陰に座り込んではぁ…っと深く息を吐いたとき
「あー、俺の特等席!」
「っひゃぁ…!」
唐突にかけられた言葉に思わず声が裏返った
「ぇ、あ、あの…っ?」
「あれ、君…」
そう言って不思議そうに首をかしげる彼は私の隣の席の…
「隣の席の茜ちゃん?」
「は、はい…」
名前を当てられて何とも言えない気持ちになりながらも頷く
隣の席の芥川慈郎くん、8割寝てるテニス部のレギュラーさん
そして私は彼が苦手なわけではなく異性との会話が苦手で話しかけられると妙に力が入るというか
そんなこんなで育ってきたから長い間話すのも苦手だしちょっとした事ですぐ恥ずかしくなったり、とにかく苦手なのか疑われるほど抵抗がない
「茜ちゃんもよくここに来るの?」
「えと、一人になりたい時とかに…ここは静かで落ち着くので」
「だよねー俺もここ気に入ってるC−」
無邪気に笑いながら私の隣に当たり前のように座る
驚いて少し体が跳ねたのだが彼は特に気にならなかったらしい…よかった
「あ、芥川君はお昼寝です?」
「うん!…にしても茜ちゃん」
「な、なんですか?」
「隣の席なんだし敬語要らないって!」
同じ学年なんだし、というべき所を隣の席だからというところは彼らしいというかなんというか…
「そうだね、ごめんね…私ちょっと苦手で」
「何が?」
「その、人と話したり…特に男の子とは…」
今言った通り、人と話すのも苦手で
私の今まで出来た友達って本当に片手に収まる…我ながら悲しい人生送ってるなと思う
「ぇ!?な、何、芥川君…!?」
芥川君は自然と俯いていた私の手を唐突に握ってきたので驚きつつ戸惑いつつ彼を見る
「まずは俺と話すところから始めてみよーよ!」
「え?」
真剣な表情をしていたからどうしたのかと思ったら予想外の言葉に思わず呆けた
「と言っても俺すぐ寝ちゃうから茜ちゃんは隣にいるだけでもいいけど!」
「え、それどういう…」
「兎に角、今日から俺と一緒に行動ね!」
一体どういうことなのか全くわかりません
何度も言われた言葉を頭の中で繰り返すけど全く理解できない
一緒に行動って、え?
「な、なんで一緒に行動…?」
「だって、一緒に行動してたら俺には慣れてくるでしょ?」
「ま、まぁ…多分」
「なら一緒に行動しようよ、俺茜ちゃんと仲良くなりたいし!ね、E−でしょ?」
「う、うん」
裏表内容にキラキラとした表情でそう言われると何も言えなり勢い負けして頷いてしまった
「やったぁ!じゃあ早速…」
「早速?」
「…寝る」
お休みと言って勝手に私の膝を枕に目を閉じた芥川君はお休み3秒だった、のび太君顔負けの寝るスピードである
展開の速さに未だについていけてないけど、幸せそうに寝てる芥川君の顔を見てたらなんか自然とまあいいかと思えた。
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