丸井と誕生日




「ブーンちゃん!」

「ぅわ!?茜!?」


見慣れた後姿を廊下で見つけ思い切り抱き着く
すると彼は突然の事に声を上げるがひっくり返りはしなかった


「ビックリしたなぁ…どうしたんだよぃ」


そういう彼は何を隠そう自慢の彼氏、優しくて思いやりのある私的に世界で一番カッコいい人



「特に何もー…ないわけないよね」

「?」


わからない様子で首をかしげる彼を見上げてニッコリ笑う

「今日お誕生日でしょ?だからケーキ作ったよ」

「は!?マジで!?」

「マジマジ、折角のブンちゃんのお誕生日なので」

「っしゃー!茜の菓子うまいんだよなー!」



本気で嬉しそうにする彼に思わず口元が緩みかける


「特別にみんなでやるパーティ用とブンちゃんだけ用の2つ準備したから」

「うわ、お前用意周到だな」

「だって、赤也くんとか絶対食べすぎるでしょ?」

「確かにな…」



容易に想像できたのか遠い目をするブンちゃんに私は苦笑した


「あいつ毎回主役より食べるからな」

「ね、ケーキ作るの私たちなのにね」

「全くだぜ」


じゃれ合っている感覚で悪態をつくが、本気で怒ってなどいない
そんなやり取りも含めて、すべてがいい思い出なのだから


「ブン太」

「ん?」

「お誕生日おめでとう、これからも末永くよろしくね」

「はは、末永くよろしくされるぜ?」



これから、何年先もずっとあなたの誕生日をお祝いしていたい

きっと数年後の私たちの薬指にはおそろいのシルバーリングがつけられているはずだと、そんな空想をしながら……



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