淡泊トリップ少女と白石の話2




「茜ー」

「…また来た」



あの日以来白石蔵ノ介はしつこいくらい私に構うようになった
友達としてとかとはなんか違う、ことあるごとにというか…説明できないがちょっと度が過ぎてる気がする。
いい加減鬱陶しかったので露骨に嫌がったりしたこともあったが彼は全然気にしていなくて

小説のようにファンクラブがあったりしたのでこれは私がいじめの対象になるかと思いきや何を思ったのか私達を中心に野次馬が出来てしまっている
つまり、靡かない私と変に付きまとってくる彼が今後どうなるのかを見ているのだ…例えるなら生でドラマを見るというか

更に言うと女の子たちも私に変な期待をしているらしい…どっちみち迷惑な話だ



「白石くんこれ以上付きまとうのは止めてほしいんですが」

「なんで?」

「迷惑です、私は普通に生活したいんです」


今までそれとなくいって来たけど今日は本気で言った、露骨に嫌がったりとかじゃなくて本気で、本心を 


「白石くんの行動は少し目に余ります、友達よりも多く話してるような気もしますし」

「あれ、ばれとった?」

「…」


こいつ、確信犯だったのか…
…別に彼と関わりたくないのは原作が変わってくるとかそう言うわけでもない、それを言うなら私たちは高校生でとっくに話は終わってるはずだし
ただこの世界の事だから彼らと関わるとなんだかとんでも体験をしてしまいそうで嫌だ、私は何の変哲もなく流されるように生きていたい

唯でさえ突然トリップしてきたのだ、これ以上何か変なことに巻き込まれるのは御免だ。


「茜は、諦めとるだけや」

「…何?」

「色んなことから目背けとるだけやろ」

「それが、どうしたって…」

「勿体無い、茜はもっと周りを見るべきや!」


わからない、他人事なのに私の両肩を掴んで真剣に怒ってくれてる彼がわからない。


「どうでもいい事で怒ったり笑ったり…茜は自分の感情表現すら諦めるん?」

「…」


そう言われて私は目を見開いた…私、そんなに感情を出していなかった?
今までの事を思い出す、確かにこっちに来てからの友達にももっと笑った方がいいとか言われてた気がする
少しでも感情を出すと驚かれたり…つまり私は知らない間に感情を出すことすらしなくなっていたらしい


「忘れてしもうたなら俺が俺が思い出させたる、位顔は茜には似合わん」

「白石くん、やっぱりおかしい…私なんかの為に真剣になるなんて」

「茜だからや、好きな子の事で真剣に悩むのは当たり前やろ」

「え…」

「な、作り笑いやなくて自然に笑うところから始めよ?」


そう言って笑った彼が私には眩しい
目を細めながらも変わってもいいかななんて思ってる自分がいた。


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