霊感のある子と仁王1




「私はよくここに来るから、寂しくなったらきなよ…うん、じゃあまたね」


私が笑顔で手を振ると相手の子は嬉しそうに笑って消えて行った…そう、”消えた”

彼らは俗に言う幽霊というものだ、半透明で後ろの景色が見える、触れないのに感情に反応して人間に影響を及ぼす存在
流石に漫画チックに妖怪なんてものがいるわけではないので相手を怒らせない様に適度に接している
小さいころから見えていたそれは周りから見たら気味の悪いものだったと思う
何もない場所に向けて一人で話しているのだ、そしてここにももう一人いるなんて言われた日には…

私はそれを言って母にもう二度というなと言われた、からかってると思われたらしい。だけど、本当にいたんだよ…もう一人。


悪い子じゃないのに、どうして否定するんだろう


「…あれ、またきたの?…いや来てもいいけど日課になってない?」


でも私は霊の存在を否定してほしくなかった、見えるのにそれを否定されるのは彼らの悲しむ顔を見ることになって悲しいから。


「…菅野?」

「っ!?」


声をかけられて驚いて振り返ると怪訝そうな表情でこちらを見てくる彼…やばい


「今、誰と話してた?」

「…別に」

「電話、ってわけでもないじゃろ」

「…」


厄介なやつに見られた、仁王雅治、女子に人気なテニス部レギュラーの一人、自由奔放で懐かない猫みたいなやつだ
どう言い訳をしようか悩んでいると、今はなしていた子がピリピリした空気を纏い始めた

不味い、霊は触れられない代わりに気分一つで人間に影響を与えてしまう、怨念なんかがいい例だ


「…私、この後用があるから」

「待ちんしゃい」


何事もなかったかのように横を通り過ぎようとしたが失敗に終わった、腕を掴まれて動けなくなる


「…何?」

「…お前さん、変なものが見えたりするんじゃなか?」

「変なものなんて見えたことないよ」


彼らは…今私の空いている方の手にしがみついてる子だって変なものなんかじゃない


「…じゃあその腕に引っ付いてるやつは成仏させてやりんしゃい」

「え…」


私は言葉を失った
どうして見えてるのというのもあるが、成仏させてやれってどういうことなの…?


「菅野、あんまりかまってやるのもそいつらの為にならん」

『私の為にならないって何よ!成仏なんかしたくない!茜ちゃんと一緒に居る!』


無言を保っていた彼女が口を開いた、私はその叫びを聞いたとき胸の奥が痛くなるのを感じた


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