白石と誕生日



※社会人設定


4月14日、この日は私にとって何よりも大事な日だ 
この日が大切な日になってもう何年も経つが毎回この瞬間は緊張する


「蔵、お誕生日おめでとう!」

時計が新しい日付を刻み始めたのを見届けてから私は少し大きめな声で言う


「おおきにな、茜」


彼はそう言って私の頬に唇を寄せた 彼はスキンシップが大好きなのも長年の付き合いでわかりきっている


「やっぱり茜に言われるとめっちゃ嬉しいわ、何でもできる気ぃする」

「ふふ、大げさだよ」


そういうが彼はそんなことないと笑いながら犬のようにじゃれてくる


「プレゼントは起きてからのお楽しみね、あんまり遅くまで起きてると体に毒だから」

「えー」

「もう、ちゃんとあげるから」


蔵は誕生日の日だけいつも以上に甘えたになる、
それは私が『誕生日くらいいつも以上にわがまま言ってもいいんだよ』
といったことから始まり今でも続けているようだ 

最初は努力を惜しまず休み方を知らない彼への
気休めのつもりで言ったのだが彼はそれを真に受け今に至る


「茜、寝よ?」

「うん」


同じベッドで寝るのはいつものことだけど
今日は特別な日、毎年この日だけは変に緊張することが多い

寝っころがり手を広げる彼のもとへ行くとそっと抱き寄せられギュッと抱きしめられる
逃がさないというようにがっちりと腰に腕が回ってくる 
若干抱き枕状態だなと思ったのはこの体制に慣れ始めたころの話だ


「おやすみ茜」

「おやすみなさい」


そういって彼の腕に顔を埋めたところで言い忘れたことを思い出した


「…蔵」

「ん?」

「…生まれてきてくれてありがとう」


そういうと彼からの返事が返ってこない

不思議に思って顔を上げると今度は唇どうしがくっついた 
蔵が嬉しそうに笑ってくれる、そんな誕生日がこの先もできることを願っている




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