白石と蔵之介





「ねぇねぇ白石くん!」


私が意気揚々と話しかけると忍足君と話していた彼は相変わらずのイケメンオーラをまといつつ振り返ってくれる


「どないしたん菅野さん?」

「えっとね、白石くんに聞きたいことがあって…」


少し聞きづらいことなんだけどいいかな?

そんな思いがあったので少し俯きつつちらりと彼の様子を伺う
何故か口に手を当てていた、何があった。


「っええよ、全然ええよ!」

「あ、ありがと…」

「ぶっ…あだっ、白石なにすんねん!」

「で、聞きたいことて?」

「スルーすんなや!」


叫ぶ忍足くんをスルーする彼のイケメンぶりと言ったら!
…いけないいけない別の思考に飛んでた


「あのね、白石くん」

「おん」

「白石くんて女装癖ある?」

「ぶっ!!!」


私の発言に忍足くんが再び先ほどより吹いた
一方の白石くんは笑顔のまま数秒固まっていたかと思うとようやく口を開いた


「…菅野さん、俺幻聴を聞いたんかもしれん、もう一回頼むわ」

「白石くん女装癖ありますか」

「幻聴であってほしかったっ…」


何故か自分の机に傾れ込む白石くん、
そんな彼に代わって忍足くんがこちらをみた どうやら笑いは収まったらしい


「俺の知る限りではやけど女装癖はもっとらんで」

「そっか…じゃあ家族関係の人が総理とかと従兄弟とか」

「ないな」


そこまで聞くとようやく白石くんが復活してきた


「えーじゃあクラゲ好きな女の子が好きとかは?」


そういうと彼は不思議そうに私を見て目を瞬く、なんか可愛い


「菅野さんはクラゲ好きなん?」

「そこまで好きじゃないかな」

「ほならちゃうわ」

「えー…全部外れかー…」


私があからさまに落ち込んで見せるとまたまた忍足くんが興味津々といったように話しかけてくる


「なぁなぁ、菅野はなんで白石にそないな質問するんや?」

「それはね、これみてよ」


私が持っていた単行本を2人の目の前にだす


「…”うみ、つきひめ”?」

「ちゃうわ、”クラゲひめ”やろ」

「そそ!海月姫!これに出てくる主人公が蔵之介っていうの」

「ちょ」

「残念ながらヒロインと同じ名前の子はいないんだけど…」


私の名前が月海ならなぁ…と思っているとちょいまちと白石くんが言う

「っちゅーことは今聞いた質問全部その話の中の”蔵ノ介”なん?」

「そーだよ、あ、漢字は白石くんのと違うけどね」

「な、なんなハードやなぁ…」

「大丈夫、周りが濃いから」

「そういう問題とちゃうんやけど…」

「?」


よくわからないけど白石くんはボソボソ言いつつ頭を抱える

とりあえず彼にもこの面白さを知ってもらうために単行本を貸そうかな
と考えていることなど彼には気づけるはずもなかった


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