白石と運命と幸せと



「蔵、手合わせっこしよ」

「ええけど、どないしたん?」

「いいから」


手を触れば相手が運命の人なのかわかるなんてネズミーのシリーズのシンデレラで言ってたけど実際の所が知りたい
そう思った私は早速彼と手を合わせる「茜、手ちっさいなぁ」なんて笑いながらぎゅっと握ってくれた

あんまりにも綺麗にはにかむから私もつられて口元が緩んでしまう
運命の人かは分からないけど、蔵のこと凄い好きだなって改めて実感することはできたからいいかなと思う



「で、手がどないしたんや?」

「シンデレラでさ、運命の人は手触るとわかるって言ってたから」

「あぁ、あれかーゆかりが見とったわ」


一瞬普通に知ってる感じだったから驚いた
…見てたの妹さんか、蔵ならそのまま一緒に見ててもなんか違和感ないけどね



「蔵はなんか感じた?」

「んー運命とかようわからへんけど」


絡めた指を解くと私の指先を持って口付ける
童話の王子様みたいで様になっていて、照れる以前に彼に見惚れた


「茜と手合わせとると自然と幸せやなって、茜の事めっちゃ好きて改めて思う」


その言葉を聞いて、私はたまらなくなった 
嬉しいとか恥ずかしいとか言う気持ちが全部好きになって溢れてくる 


「え、ちょ…なんで泣くん!?」


私が彼を見つめたままボロボロと涙を零すと彼は目元から優しく拭ってくれた


「なんか、幸せすぎて溢れてきちゃった」


そう言って笑うと蔵は困ったように笑って私を腕の中に閉じ込める
ぎゅーっと抱きしめ返すと頭を撫でられる



「茜、俺まだプロポーズもしてへんし泣くとこちゃうんやけど」

「うん、でも凄く幸せだよ」


見上げると蔵も照れくさそうに笑う、少し頬が赤い気がする


「俺もめっちゃ幸せや」


私が思うに手を繋ぐのは思いを繋ぐだけじゃなくて好きだと無意識に確認し合ってるのではないかと思う
蔵と手を繋げば言葉にはしないけど好きがこんなに溢れてくる
手を繋ぐことに限らず、今みたいに抱きしめあったりキスしたり、その人に触れてるだけで幸せになれる

幸せだと思えるのなら…私にとっての運命の人はきっと蔵なんだろうな 

そう思っていると彼に頬を撫でられたので大人しく瞳を閉じる
そっと口付けられて、また幸せが溢れた

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