完璧白石の親戚



私と蔵ノ介くんの関係を知っている人は口をそろえて羨ましいという。
私は彼の遠い親戚ってだけだ、何が羨ましいことか
もし私が彼に好意を持っていたとしてもきっと彼は私の事は親戚の子認識止まりだろう
つまり、近くにいられる代わりにそういう対象で見られないということだ、なんだか考えて虚しくなった
…だがよくよく考えるとなぜ私はそんなことを考えているのだろう
私だって彼のことは親戚の子止まりだったはずなのに

同じ高校に入って、今まで以上に近い関係になって…なんてことはなく今まで通り接してくれている
なんだかんだで同じ高校になったことで、彼のいいところや偶に会うだけでは見えない良い所もたくさん知れた
でも知れば知るほど彼という存在が遠くなっていった 

かっこよくて、頭が良くて、何でもできて――
きっとそんな彼にはさぞ可愛らしい彼女がいるのだろうと思うと顔も知らないその人が羨ましくもあり少し憎くもある

(蔵ノ介くんの事、誰よりも知ってるつもりだったのにな)

私の知ってる一面なんてほんの一部だってことを知ってしまった
そしてこれからも知らない彼の一面があるのだろうと思うと悔しい。


「茜ちゃん?」

「ぅ、わ!?」


カフェでボーッとしていた時急に彼の整った顔にのぞきこまれて驚いた


「ビックリしたぁ…蔵ノ介くん、なんでここに?」

「茜ちゃんが考え事しとるの見えて入ってきてしもた」

「…お見苦しものを」

「全然、寧ろ可愛かったで」


とりあえず彼を見ていて思ったことがある
イケメンの半分くらいは天然タラシではないかと、しかも無駄に決まってるから何も言えない


「何考えてたん?」

「えと…」


あなたの事ですと言ったら何か変わるだろうか…普通なら考えないようなことを思った


「蔵ノ介くんの事考えてた」

「え」


冗談とかで返されるんだろうなとか思ったけどそうでもなかった
彼は驚いたように私を見ていた、心なしか頬が赤い気がする…予想以上の反応をされて思わず戸惑った


「それホンマ?」

「う、うん」


ずいっと顔を近づけられて問いただされる 返事をする私の顔は絶対赤くなってる


「蔵ノ介くん、近いよ」

「おん、茜ちゃんのかわええ顔よう見えるわ」

「っ…」


可愛いとかはいつも言ってくるけど今日はなんか…!
いろんな意味で頭がパンクしそうになっていると蔵ノ介くんがふと笑って顔を離してくれた


「スマン、反応がかわええからつい意地悪してしもた」


そう言う彼があまりにも絵になっていて私は心臓を掴まれたような気分になった


「で、俺のこと考えとったって?」

「う、うん…蔵ノ介くん何でもできるなーっと思って」

そういうと彼が少し目を輝かせたように見えた


「俺、茜ちゃん的に見てかっこええ?」

「へ!?」


唐突な質問にぎこちなく頷くと彼は嬉しそうにはにかんだ
ちょ、離れたとはいえ近すぎてダメージ倍なんですけどっ…!


「俺な、完璧目指そう思ったんは茜ちゃんの影響やねん」

「え…」

「まだ小学生くらいの時やったけど、茜ちゃんが何でもできる人てかっこええて」


そんなこと言っただろうか、記憶を漁るがその記憶がなかなか出てこない


「茜ちゃんがかっこええ言うてくれたし、次のステップ進んでもええかな」

「え?」

「俺、初めて会うた時からずっと茜ちゃんの事好きやったんや」


この時初めて、親戚でよかったと思えたと同時に目の前の彼が無性に愛しくなった


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