ピンポーンと軽快な音が鳴り私はふと夕飯の支度中の母を見る


「奈々緒出て」

「ですよねー」


手伝ってない私がどう見たって暇です本当にありがとうございました。
ということで足早に玄関に向かう


「はーい」

「こんばんわ」

「…目の錯覚」

「じゃないっすわ」


会いたいと思いすぎて私が見せた妄想かと思ったんだけどそうでもなかったらしい


「光くん…もしかしなくても部活の帰り?」

「そうですけど」

「お疲れ様、おかえりなさい」

「…このままここに住みたいっすわ」

「それはダメだけど」

「っち」


一緒に暮らすとか展開速すぎだわ、というかここに住んでも来月私上京しますけど。
なんて思いながら一緒に住みたいと思ってくれたことについにやける


「それよりどうしてここに?」

「今日ホワイトデーなんでお返しを」

「え!?」

「何でそんな驚いてんねん」

「いやいやメールでもなんでも一言言ってくれれば休みの日とかでよかったのに…」


流石に部活帰りに私の家まで来るのは面倒だっただろう
学校から私の家に来たらどう考えても彼の家に帰るのに遠回りになってしまう


「いえ、会いたかったんで」

「…」


その言葉を聞くや否や私は外に出て玄関を占め彼にタックルする勢いで抱き着いた


「もう光くん好き!」

「はいはい俺も好きですよ」


鬱陶しがらずにちゃんと抱きしめ返してくれる光くんに惚れ直しながら離れないように抱き着く
まだ少し冷たい風に当てられて少し寒くなったのもあって凄く温かかった


「奈々緒さん、日曜日空いてますか」

「空いてます、空いて無くてもあけます」

「無理はせんでいいですけど…まぁ空いてるならデートしましょ」

「で、デート…だと…!?」


初めて会った時はしれっとあしらわれる程度だった関係なのに今では彼の方からデートに誘ってくれるだなんて
嬉しくてまだ現実じゃないんじゃないかなんて考えたりする位だ


「します?」

「します!」

「っふ…じゃあ、俺そろそろ帰りますんでこれどうぞ」


離れていく彼に少し寂しさを覚えながら手渡された袋に首をかしげる 
のぞいてみると可愛らしいラッピングのされた箱が入っている


「なにこれ」

「開けてからのお楽しみっすわ」


悪戯っ子の様に笑った光くんはそう言って自転車に乗ったので近くまで駆け寄る


「これ以上いると帰りたくなくなるんで」

「光くん…」

「おやすみなさい奈々緒さん」


「お、おやすみ…光くん」


ほっぺにキスをして彼はそのまま自転車で走り去った


「が、外国の挨拶的なものですか…?」


誤魔化す様に言うが熱は引かず冷たい風が涼しく感じた


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