俺と彼とその本命


  



「俺、本命いるから。」

そう言ってシャツを直した彼はそのまま俺を振り返ることもせずに「じゃ、」とそれだけ言って俺の家から出て行った。

「へ…?」

俺が初めての行為をした後のベッドのなかで考えていた初めてできた恋人…という甘い言葉が、頭のなかでボロボロに砕け散っていく音が聞こえた。
その瞬間思った、やってしまったと。



「…これ今日忘れてった。」

そう言いつつ紙袋に入れた彼のセーターを渡す。

「ああ。暑かったから脱いでそのまま忘れたのか。」

そう言って受け取る彼の隣には彼の本命らしき男が立っていた。…なんていうか、うん…。
すらりと伸びた背は彼よりは低いがそれはけして男のなかで低いとは言えず、そしてスッと通った鼻筋は日本人とは少し違うし、眼だって二重で、その奥には意思の強そうなブラックダイヤみたいな瞳が揺れている。

「…ん?どうかした?」

「はっ!…あ、いや…。」

そのブラックダイヤの持ち主が俺をその中に映してそう言った。
…いや、確かに本命っぽそうだけど、でも…。

「……」

彼を恨むようにじっと見れば彼の瞳の中には、そのブラックダイヤの彼が映っていた。彼しか映っていなかった。しかも、その口元にはやんわりとした笑みすらのっている。
…俺にはそんな顔、したことない…。

「…そろそろ行くぞ、本間。」

そう、彼が口を開く。ブラックダイヤくんは本間くんっていうのか…。
本間くんが腕時計を見てから、小さくあ、と声を上げた。

「そうだね、…じゃあね、えっと…」

「廣井、廣井大史…」

「ダイシくん?僕は本間達臣。よろしくね、じゃあね大史くん。」

「…」

そう言って本間くんが手を振る、俺も振り返した。隣の彼は俺を目には入れるが少し睨んだように見て来るのがわかった。
…そんなに睨まなくって、俺が好きなのはあんただよ。

「…なんて」

ずっと、言えない。セックスしてしまったけど、そんなこと言ったことないしこれから言えるような状況になるとも思えない。ので、それは俺の心のなかに仕舞っておく。

彼は大体毎週金曜日に俺の家に来る。…たまに、近くでお酒を飲んできたときにも来る。
大学生になったから、と一人暮らしをさせてくれている親にはありがたいが…その家でこんなことしてるだなんてなんだか罪悪感を感じる。
ちゃんとお互いがお互いを好きで、愛し合った末のことならいいんだ。なのになんだこの様は、といいたくなる状況でしかも男と…。

…多分俺みたいな人がいっぱいいるんだろうな、とは思う。その中の一人でもいいから、入れて欲しかった。それくらい俺は彼に恋してるんだ。
なんでかって、なんでだろ。恋ってそんなもん、俺の場合気付いたらもう遅かったんだ。


「……」

ペタペタと鏡を見ながら自分の顔に触れてみる。
まったいらだ。…彼とも、本間くんともちがう。
鼻ぺちゃとよく母さんに言われた、でもそれが可愛いと。
眼がつっているのは、狐に似ていて知的だからと。
痩せているのは健康だから、と。
小さいことは気にしなかった自分の顔やスタイル。もしかして俺の顔が整っていたりしたら彼の本命になれたかもしれないのに…。

「…はあ…。」

ため息を吐いた後に息を大きく吸うのは、逃げてしまった幸せを吸うため。
何回もため息をついて、大きく息を吸ってるから、幸せはにげてないはずなのに。


「お前ってなんも言わないのな。」

そう、彼が俺を抱いてから煙草を吸っている時に言った言葉だった。
確かに、昔から無口だと言われた。そのせいか表情が怖いと言われて友達は少ない方だと思う…。

「そうかも」

「…はあ。」

彼がため息を吐いてから俺から視線をはずした。
俺は彼の幸せを奪うみたいに大きく息を吸った。

「飯くいたい、腹減った」

「ああ、じゃあチャーハンでも作るよ。」

「いい。本間と飯食いに行ってくるから」

そう言ってから彼はおもむろに立ち上がるとあの日みたく「じゃ、」と言って家から出ていった。

「…俺も、腹減ったなあ」

作る気力も無くなって再びベッドへダイブした。彼の匂いがどこかにまだあるんじゃないかと必死に鼻をひくつかせるが、そこまで俺の鼻は良くなかった。
本間くんの本命は誰なんだろう。

「あ、大史くん!」

あまり俺のことを呼ぶ人はいないから少し遠慮気味に振り向くとブラックダイヤくん…本間くんが少し遠くから手を振っていた。俺はそのまま前を向いた。多分違うひとだろう。

「ちょっと、大史くん!?」

「…っ?」

肩を掴まれて思わず身体が跳ねた。

「え、俺…?」

「えっ!廣井大史くんでしょう?」

もしかして違った?そう言う本間くんに俺はポカンとしてしまった。

「俺の名前を憶えてるなんて…。」

「え…?ぶふっ、…逆に覚えてない方が可笑しいよっ!」

そう言って本間くんはとても愉快そうに声をあげて笑った。
見た目ではなんとなく彼はそんな笑い方はしなさそうなのに、…これがギャップってやつか…。
…そこに、彼は惹かれたんだろうか…。

「本間くん、…」

「ん?なに?…あっ、僕の名前おぼえていてくれたんだね。ありがとう。」

「あ、いや…こっちこそ、ありがとう…。」

俺の名前なんて覚えてくれるんだ。きっと本間くんはすごくいい人に違いない。彼は人を見る才能があるのか…。新たな発見だ…。

「これから学食行くんだけど、大史くんも行かない?」

にっこり笑う本間くんに俺は思わず頷きそうになった。だが俺は首を横に振った。
きっと行ったら彼に会うだろうから。
彼は最近俺の家に来ないんだ。多分なにかあったんだと思う。
それが知りたくないから、あまり彼を視界にいれないようにしてる。

「先約かあ…」

「あ、いや…。」

「違うの?なら、」

「本間」

振り返ると彼がポケットに片手を突っ込みながら立っていた。
あっ、しまった…。

「じゃ、じゃあ俺行くね…!」

俺は気持ち少し早足めに足を動かそうとした、が

「一緒に学食行こうよ、ね?」

本間くんが俺の腕をがっしりと掴んでいた。

「……」

俺は彼をちらりとみると彼は俺ではなく本間くんを見ていた。…俺のこと、気にならないのか…。
すこしチリリ、と胸が焦げるような、そんな感じがした。

「…うん、」

「ほんと!じゃあ行こう。」

本間くんは俺の腕を掴みながら意気揚々と言った感じで足を進める。
彼が横に並んで俺は思わず彼を見てしまった。

「…っ…」

彼は鋭い視線で俺を見ていた。
…俺はサッと視線をそらしてしまった。
それから学食について彼と同じカレーを頼んだ。あまり美味しくないと思ってしまった。

「で、なんで二人は仲が良いの?」

「え…?なんで、だろ…?」

そう言って彼を見るが彼はそ知らぬふりをしてカレーを食べ続けている。
確か、最初は普通に友達だった…けど、飲み会?で仲良くなって…それでそのままあの日に…。
思い出してから胸が痛くなった。

「わ、かんないや。いつのまにかだね」

「ふーん?
じゃあ僕とも仲良くなってよ。」

ね?
そう言ってテーブルに身を乗り出した本間くんに俺は少し身を引いた。

「うん…」

彼の視線が気になった…でもその好意は嬉しかった。
俺、友達少ないし…。

「もういらね。」

「えっ?食べないの?
じゃあ僕が貰っちゃおう」

本間くんがそう言うと彼はいらだったように席を立ってから「勝手にしろ」と言い放ってどこかへ行ってしまった。
彼も、このカレーを味気なく感じたのかも知れなかった。

「変なヤツ。
っま、これでやっと二人で会話できるしね。」

「えっ?」

「実はさ、前から気になってたんだよね。
アイツ、なんか大史くんのこと隠してたみたいだったからさ」

「…。」

彼が俺を隠してたなんて当たり前だ。だって本間くんに知られたくないんだもの。
…はたから見たら俺って空しい役回りなんだろうな。

「うーん。なんでだろうね、…独り占めしたかったのかな?」

「え?…あ、多分俺と知り合いって知られるのが恥ずかしいのかもしれない。」

「は?」

「ん?」

本間くんがスプーンを動かす手を止めて俺を見た。
俺、なにかへんなこと言ったっけ…?

「なんでそう思うの?」

「えっ?…なんでって、…」

俺はうつむいてからちらりと本間くんを見る。
…俺自身にも問題はあるんだけど、でも一番は俺と彼がやってる行為にあると思う…。
一番知られたくないひとには顔合わせられるのだって嫌だろうし…。

「俺、あんまり人付き合い上手くないし、…だから」

「だから何?」

「えっ、とその、…」

え?…もしかして俺怒られてる…?
なにかしたっけ、…あ、本間くんてもしかして彼が好きで…妬いてる、とか?
俺が彼と知り合いってことが気に食わないのかな、

「…ごめん、」

「え?あ!違うよ!
ごめん、今のは言う相手間違えた。…ちょっと俺ヤバい奴だったよね。ごめんね。」

「ううん、俺結構人にイラつかれたりするから大丈夫だよ。」

「うーん、どっちかっていうと色々やきもきしてるのかもね」

「やきもき?」

そう俺が問うと本間くんは誤魔化すようにゴメンネ、と再度謝ってくれた。
でも、もしかしたら彼のこと本間くんも好きなのかも…そしたら俺は彼のために何をしてあげればいいんだろう。
俺に色々くれた彼のために何を返せるんだろう。



「よお。」

「あ、うん」

鍵を渡しているので彼はいつでもやってこれる。
でも今日はメールが来て『今日行くから』とだけ書いてあった、だから俺はそれに『了解』とだけ返してご飯を作っていた。
念の為に彼の分も、そして彼が来たのはご飯を作っている最中だった。

「…。」

時計を見ればいつもより来る時間が早い。
…いつもはお酒をのんできたりするからかな…今日は素面ってこと、だよね。
…思うにお酒を飲まないと俺とは出来ないんだと思う。だってきっと想像ではきっと本間くんを思っているだろうから、お酒の力を借りているのかもしれない。

「…あ、ご飯食べる?」

「お前、本間に何言った。」

「え、…?」

本間くんとは食堂の時から少しだけ、連絡を取るようになった。
遊びに誘われたけど、でも彼のことを考えるとどうにも足が進まなくて結局実現したことはなかった。

「本間が、お前のこともっと大事にしろって言ったきた。」

「え、なんで…?」

「お前なんて言ったんだよ、本間に。」

眉間にシワを寄せながら聞いてくる彼に頭が真っ白になった。
多分今の彼は俺が何を言っても聞いてくれない、そう思ったから。

「…ごめん。」

「…なんて言ったんだよ。」

「うん、…」

よくわからないけど、もしかしたら食堂の時の言葉かもしれない。
何て言ったっけ俺、…そしたら本間くんが怒ったんだ。
…あ、

「俺と、知り合いなのが気に食わないみたいだったんだと思う…」

「…俺がか?」

「そう。
言い過ぎたって謝ってくれたけど、多分そういう事なのかも知れない…」

「…フーン…で?お前は?」

「え?」

俺がなに?

「お前はどうしたいんだよ」

「どう、したいって?」

彼と本間くんが付き合ってしまったら、俺はお払い箱だろって…ことか。
そんなの分かりきってたんだけどな。

「…うん。また新しく付き合いを増やそうと思うよ。」

できるかわからないけど、それでもずっと独りでいるよりかはマシだと思うし…うん。

「は?それだけかよ」

「えっと、あ、おめでとう…!」

パチパチと拍手を送ると彼はカッと顔を赤くしてから俺の胸をドン、と押した。
俺の身体は無防備だったみたいでぐらりと揺れてからそのまま床に尻餅をついてしまった。

「馬鹿にしてんじゃねえぞ!
お前の気持ちなんかな、とっくに見え見えだったつの」

「そんな、馬鹿にしてるつもりじゃないよ。」

…俺の気持ちって、もしかして本間くんと喋ってる時のあの疑いの目ってまだ取れてなかったのか。

「本間くんのことは、友だちとして付き合いたいと思ってるよ。」

「…、は?お前本間も好きなの?
なに、あいつともやってるわけ?」

「え、いやそんな、」

「何なのお前、誰にでも足開くって事かよ…馬鹿じゃねえの。」

そう言って彼はイラついたように煙草を引っ張り出したが入っていなかったらしく、小さく舌打ちをしてから空き箱を壁に投げてから玄関へ出て行こうとした。

「ちが、待って」

「お前ちょっとは可愛らし気にしろよ。
そんなんだから捨てられるんだよ」

「ちょ、…」

そう捨て台詞のように言ってから出て行ってしまった。
お、俺そんなに軽く見えてたのかな…?

「…こういう時があるから、友達って必要なのか、」



「ごめんっ遅れた!」

ファミレスで先に席に着いているとその声とともに本間くんが前の席に座った。

「あ、いや…俺も急に呼び出してごめん…。」

待ち合わせに本間くんが少し遅れたのは本当だったけど、でも俺が急に言い出したんだから俺のせいだ。むしろ来てくれたことの方が凄い…。

「いいのいいの!それで?悩みがあるって…
…それってアイツの事…?」

不安気に、だけども決定事項みたいにそういう本間くんに俺は小さく頷いた。
だって、何かあった時は何でも相談してくれって言ってくれたから…。やっぱり間違ってたかな…?

「迷惑じゃなかったらなんだけど、」

「嬉しいよ!相談してくれて!
それに、迷惑だったらそもそも来てないし」

そう言って笑う本間くんに俺も笑い返す。

「あの、…本間くんって彼と付き合ってたり…」

「へ?」

「あの、えっと友達じゃなくて、」

「それはわかるけど、…あー…そう思ってるのね。違うよ。」

「そ、…っか。」

ちょっと、ホッとする。
でも本間くんが彼を好きっていう事はまだ解決してない。

「ついでに言うと別に僕はアイツの事どうとか思ってもないよ。友だちだよ。」

「あっ、そう、なんだ…。」

「…ちょっと嬉しそうにしないでよー…まあ、いいか。
なんだか道のりは長そうだなぁー…」

「??」

「それで何でアイツと喧嘩したの?」

にっこりと、さっきの表情とは真逆の様な笑顔で本間くんがそう聞いてきた。
凄い。なんでわかっちゃうんだろう?

「あ、えっと、…」

「僕はね、あんまりあいつと大史くんは合いそうにないと思ってるんだ。」

「え…?」

「あいつはちっとも優しくなさそうだし、大史くんは優しすぎるんだよ。きっと大史くん、ズルズル引きずられていっちゃうよ?」

「…そう、かな…。
でもたまに優しいよ。」

最近は怒られてばっかだけど、それはきっと俺が悪いから。
前は優しかったんだ、ふとした時とか。

「たまに優しくされて喜ぶだけでいいの?
そしたら大史くん、都合のいい人になっちゃうよ。」

「え…。」

本間くん、どこまで知ってるんだろう。
も、もしかしてバレてる…?俺と彼がやってること、とか…。

「僕ならね、そんなことしないよ。
ちゃんと言葉に表すし、態度とかでも愛情表現だってするし…。」

「…うん」

愛情表現。
多分本間くんは普通のことを言ってるのかもしれないけど、俺と彼はそんな、愛情だなんて言えるような関係じゃないんだ。

「もう少し、抵抗ってわけじゃないけど、一歩引いてみたらどうかな。
…他にも目を移す、とか。」

「抵抗…」

「大丈夫、そのくらいしたほうが効き目あるよ。
ちょっと試してみるくらい、良いんじゃないかな。」

「できるかわからないけど、うん、やってみるよ…!」

どっちみち、もう飽きられてるから付纏わない方が良いんじゃないかなって、そんな気もしてたし…それにもしそれで効果があっても嬉しいし…。
うん、それで良いんじゃないかな。

「アイツがいなくなって暇になるだろうから、僕がその時間埋めてあげるね。」

そう言うと本間くんは俺の頭を優しく撫でた。
彼もこんな風にしてくれた時もあったな、そう思いながら心地よさに目を閉じた。



「ただいま」

「お、おかえり…」

ここ最近毎晩みたいに本間くんは俺の家に来てくれる。大学に近いから便利なのかな、泊まってく事が大半だった。…それが今はすごく嬉しい。
気を使ってくれてるのかも知れないけど、彼は週に1、2回くらいしか来なかったから、今は一人じゃない時の方が多くて嬉しい。俺、一人が寂しかったのかな。

「今日はハンバーグを作ろう。
これなら二人で作れるでしょう?」

そう言って隣で笑う本間くん。
こんなの想像もしなかったけど、今度俺に好きな人ができたらこういう風にふたり並んでご飯の支度とかしたいなぁ…

「最近、アイツと何か話したの」

ハンバーグを手で形作っている時に、そう言った本間くん。

「…ううん、何にもないよ。
メールとかも来ないしね。」

「そっかぁ。」

ぱん、ぱん。と手のひらにねたを当てて空気を抜く。
もう完璧に俺は彼に飽きられたんだろうな。

それを熱したフライパンに置くとジュウウ、と音がした。



「っおい!」


「…ッ…」

肩をがっしりと掴まれるけど、どうして良いかわからなくて振り向けない。身体が凍りついてる。
こういう時どうすればいいんだろう、本間くんが言ってた《一歩引く》ってどういう事?

肩をぐい、と引かれて世界が回って彼が目の前に現れた。

「お前、今まで何してた!?」

「、…あ、えっと、…」

「どうせ本間だろう!?
今日一緒に歩いてきただろッ駅の反対の道から!」

「…俺、…」

どうしていいかわからずに俺は彼から視線をサッと逸らした。
本間くんに助けを求めるのは間違いだって分かってるけどこういう時はどうしたらいいかわからなくて、なんて言っていいかわからない。

「あれってお前の家から歩いてきたって事か、」

「あ、うん…」

視線を逸らしたままにそう答える。

「お前ら付き合ってるのか…」

「…ううん、違うよ
本間くんが俺のワガママに付き合ってくれてる。」

「本間本間って、…お前あいつに乗り換えたのかよ!?俺は何だったんだよ?踏み台か!?」

「ふ、踏み台…?」

彼は俺の両腕を掴んで揺さぶるようにそう言った。
俺は何だか唖然としてしまって、おうむ返しに答えた。

「俺はキープってことか?おい、俺はなお前が俺のことを」

そこまで言って言葉は切れた。
彼が喋るのを止めたのではなく、俺の耳が聞こえなくなったからだ。

「 」

耳に暖かな感触、こんなことする人なんて…決まってる。
俺は本間くんの手に自分の手を重ねた。
本間くんが優しすぎて泣きたくなる程だ…

「 !」

相変わらず目の前で彼が喋っている。きっと俺を罵ってるんだきっと。
俺が彼から本間くんをとったと思ってるんだ…。


「ごめんね、本間くんは俺のだから」


俺はそう言って目の前の彼をまっすぐ見つめた。
彼はハッとしたような唖然とした顔をして俺の肩から手を離した。

「ごめんね、」

それは二人に向けたような言葉だった。
本間くんの手を握ると握り返される。
その手を辿って顔をみるとやっぱり本間くんだった。

「行こうか。」

にっこりと本間くんはそう言って綺麗な顔で微笑んでくれた。


「うん」

きっとこれで良かったんだ。きっと、

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