僕とお前と、それからお星様
[台本用]
『ぼくの一番はお前だけ』
僕がそう言ったら
お前はただじっと
僕を見詰めてたよね
でも僕は、
それだけで
胸がいっぱいになったんだ
「僕とお前と
それからお星様」
母「なんで…なんで万引きなんかしたのよ!?アンタの所為で明日から外出歩けないじゃないの!!」
僕「知らないよ!!僕がやったんじゃなッ(殴られる)」
SE:ビンタ
母「ッ…もうアンタなんかうちの子じゃないわ――」
僕『いつもそうだった。あの人が僕を信じてくれたことなんかなかったんだ。でもわかってた…あの人がずっと待ってたの、わかってたんだ。だから僕は、この日を境に父さんのお母さん…つまりはおばあちゃんの家に行くことになった』
母「電車、わからなくなったら駅員さんに尋ねなさい」
僕『母さんが最後に僕に言った言葉だった』
* * *
SE:引き戸開閉
(ガラガラガラ)
僕「…ただいま。」
SE:足音(板張り靴下)→停止後引き戸開け(襖あたり)
僕「…ばあちゃん、ただいま…」
※三秒無音
SE:戸を閉める
僕『耳の聞こえないばあちゃんと僕とでは会話が出来るはずもなくて、二人きりで暮らす一軒家はとても静かで、時々僕は淋しくて泣いていた。都会から田舎に来たってこともあって、最初は学校の子たちが欝陶しかったけど、それは少しの間だけで、いつの間にかすっかり落ち着いて僕は独りぼっち。学校でも家でも、独りぼっち』
SE:鈴虫
僕『夏休みはずっと本を読んでいた。いろんな本をたくさん読んだ。読んで読んで読みまくってたら、夏もいつの間にか終わってた。』
僕「…星……守る犬。僕みたいだ」
僕『沢山読んだ本の中で、一番気になった本。本っていうより絵本だけど…、凄く依存出来た。手に入ることのない星をただ思い続ける犬のお話』
SE:ベッドの軋み→衣擦れ
僕「(欠伸)…明日は何読もうかな」
僕『僕の休みの日は本を読んで過ごすのが当たり前になってきてた。あの日までは――』
* * *
犬「ワンワンッ」
※三秒無音
犬「ワンワンワンッ、ワンワン、ワンワン」
SE:本を閉じる
僕「…もう…何処の犬だよ煩いな」
SE:足音→窓開く
僕「…あれ…いない」
犬「(↑被せる)ワンワンワンワン(フェードイン)」
SE:犬の足音(フェードイン)
僕「…外、じゃ…」
犬「ワンッ!」
僕「へ…?どぅわッ」
(振り向いた瞬間視界に飛び込んできた犬に飛び付かれて倒れる)
SE:転倒
犬「へっへっへ」
僕「ちょ、待っ…はぁ!?なんで犬ッ…野良!?ちょっと、退け、よっ。ばぁーちゃん、ばぁーーーーちゃーーーーん!!!」
犬「わん、をぅをぅをーう(遠吠え)」
僕『それが僕たちのはじめての出会いだった』
僕『僕はお前のことが大好きだよ。』
―僕とお前と
それからお星様――…
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