「っぁ……ん…………!」
激しい律動に合わせて俺の身体も上下する。
気持ちいいとか、満たされるとか、そういう本来あるべき感情はない。
だが俺にとって大切なのは、今現在誰かと触れ合っているという事実。
ひとりではないと感じられること。
別に、今俺を抱いている三和を他の誰かと重ねているわけではない。
かといって三和のことが友達を越えた意味で好きだというわけではなく、俺たちは交際すらしていないのにどちらかの家に遊びに行っては身体を重ねていた。
三和が俺をどう思っているのかはわからない。
自然といつの間にかに俺たちはこういう関係になっていた。
「っ……イキ、そ……!」
切羽詰まった声。
俺はそれに対して特にコメントもせず自分勝手に喘いでいた。
すぐにナカに違和感が走り三和が射精したんだとわかる。
俺は自分の性器を乱暴に扱いて無理矢理射精した。
「はい、ティッシュ」
「ああ」
ぼうっとする頭を特に働かせようともせず汚れた下腹部を拭う。
三和は適当な部屋着に着替えると部屋を出た。
俺は脱ぎ捨ててあった下着を身に付け、制服をシャツだけ着てベッドに寝転がった。
自分の家でないというだけで安心する。
他人の温もりにすがることができる。
「あれ、眠い?」
俺の心情とは真逆の声。
「いや」
三和は部屋の真ん中に備えられている机に小さなカップとスプーンをふたつずつ置いた。
「新作なんだぜ〜。櫂も食えよ」
カップにはいかにも高級そうな文字で「なめらかカスタードプリン」と書いてあった。
一瞬断ってしまおうかとも思ったが、三和の嬉しそうな表情を見ていたら自然と体が動いた。
わざわざ三和の隣に座り、蓋を剥がす。
「お前は本当に甘いものが好きだな」
「新作を試さずにはいられない主義なんです〜」
すでに食べ始めている三和からはバニラビーンズの優しい香りが漂っていた。
釣られるようにして俺もひとくち含む。
商品名だけあって滑らかな口当たりで柔らかい甘さが広がる。
なんだか寂しくなった。
思い出したくない場面が画像となっていくつも現れる。
悔やまれる過去が唐突に俺を責め立て心臓を鷲掴みにした。
カラン……
机にスプーンが転がる。
「…………っ」
俺はこの息苦しさを紛らわせたくて自分で自分の首を絞めた。
「ちょ、櫂っ!」
首を絞める自分の力よりも何倍も強い力で手を引き剥がされる。
三和に両手の自由を奪われ俺は髪を振り乱した。
それと同時に嬉しくなった。
こんな形でも人の温もりは感じられるらしい。
なにもセックスだけが選択肢ではなかったのだ。
むしろこっちのほうが、より感じられるかもしれない。
口角が上がる。
「どうしたんだよ、櫂……」
必死に顔を覗き込もうとする三和。
俺はそれに応えるように真っ直ぐに三和を見た。
大きな澄んだ瞳が揺れている。
わざと薄く微笑み顎をあげ、俺ははっきりと呟いた。
「三和」
「…………」
「俺、死にたい」
---その甘さに胸が痛む---
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櫂くんの笑顔を見るとたまにツラくなります。
0212.02.24
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