◆◆あなたから櫂くんへ!◆◆
※夢要素注意
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期待以上の光景に口許をにやつかせながら私は画面をスクロールした。
(ひゃー……。えろいぃぃ……!)
これが私の日課。夜な夜な、パソコンに映る彼に想いを馳せてしあわせな気分になる。
頭の中もお部屋の中もだいすきな櫂くんでいっぱい!
絶対に叶わない恋だというのはわかってる。
私と櫂くんでは本当の意味で住む次元が違うのだから。
だけど、2次元に恋しちゃダメなんて法律はない。
……だから、すきなだけ想っていいでしょう、櫂くん?
「あっ、そうだ」
ルームウェアの胸元がだらしなく開いているのも気にせず立ち上がる。
壁に張られた櫂くんの顔を指先で撫でた。
平らで冷たい肌でさえ愛しい。
強い翡翠の瞳は真っ直ぐに私を見つめていて、目が合うだけでドキドキする。
「一緒に食べようね」
今日はバレンタインデー。
私はもちろん櫂くんのためにチョコレートケーキを作った。
櫂くんの喜ぶ顔を考えながらいっぱい想いを込めて作ったケーキ。
昼間に作って冷蔵庫で寝かせておいたのをすっかり忘れていた。
触れることすらできない櫂くんに食べてもらうのはいくらなんでも無理ということは私にだってわかる。
だから、お部屋の櫂くん(グッズ)と一緒に食べることで、私の想いを受け取ってもらったことにするのだ。
私は足音をたてないように台所へ行くと、小さめのケーキが乗ったお皿とフォークを持ってお部屋に戻った。
そっとドアを閉め、パソコンの前にあるソファーへ目をやる。
その瞬間私の心臓は、耳元で「わっ」と驚かされたときよりもずっと激しく跳ね上がった。
声すらあげることができず、カタカタと震える足を支えるのと、ケーキを落とさないようにするのとで精一杯だ。
「……っぁ……ぁ……」
ことばを紡ぐことができない。
恐怖なんてものは微塵もないが、ただただ心臓がものすごい勢いで脈打っていた。
目眩もしてきて思考が停止しそうになる。
ハンマーで頭を殴られたような感覚とはこういうことをいうのだろうか。
「どうした」
「ひっ!?」
無理もないと思う。
だって、ソファーにはだいすきな櫂くんが座っていたのだから。
◆◆◆
「……落ち着いたか」
大きな手が私の背中をさする。
落ち着けるわけがない。
か、櫂くんが、本物の櫂くんが目の前にいるなんてっ……!
狭いソファーでは自然と櫂くんの身体が私に触れ、確かに感じる体温に動揺してしまう。
こんなに非現実的なことが起こっているというのに全く夢だとは感じさせないこのリアルさ。
俯く私の視界の端には櫂くんの細い脚が映っていて、なんだか我慢ができず、その上にそっと手を乗せてみた。
(さっ…さわれる……!!)
あまりの感動に更に手を這わせてしまう。
服の上からでも十分に伝わる体温。
漸く幻覚ではないという実感と嬉しさが込み上げてきた。
本当に、いるんだ…櫂くんが……!!
「っ櫂くん……!」
時間がもったいないような気がして、やっと櫂くんを見上げることができた。
予想以上の顔の近さにまたしても心臓が跳ねてしまう。
整った綺麗な顔立ちと翡翠の澄んだ瞳はまさしく櫂くんそのものだった。
「ふたつ、いいか」
ひぃぃ、やっぱり素敵な声……!
疑問だらけだけど、今はこの状況を楽しみたい……!
「なっ、なに?」
櫂くんは白くて細い指でソファーの向かい側を差した。
私も釣られてその方向を見る。
「……!!?ぅ、ぅわぁあ!!」
指を差した方向、パソコン画面にはあられもない櫂くんの画像が広がっていた。
急いでブラウザを閉じる……がデスクトップの壁紙も櫂くんで、私はノートパソコンごと蓋を閉じた。
「ごごごごめんなさい」
「……見なかったことにしてやる」
櫂くんは更に「今更だったかもな」と続けた。
私のお部屋にいて視界に櫂くんが映らないことなんてないもんね……。
「もうひとつ……」
「え?」
櫂くんが次に指差した先は私。
指先と櫂くんの視線の方向が全然違くて、私は首を傾げることしか出来なかった。
「なっ…なに……?」
聞けば、櫂くんはちらりと私を見て小さく呟いた。
「見えるぞ」
「見え……はっ……」
顔も耳も熱くなっていくのがわかる。
私は櫂くんに背中を向けて急いでファスナーを引き上げた。
日頃のだらしなさがこんな形で指摘されるなんて……!!
恥ずかしすぎるっ!
あっ、でも櫂くんにだったら別に良いかな……なんて思えてしまって急いで頭を振った。
胸元をきゅっと握ったままソファーに座り直せば櫂くんは「安心しろ。見えそうってだけだ」と私の頭を軽く撫でた。
や、優しい……。
「あのっ、なんで櫂くん、ここにいるの?」
照れて仕方ないから唐突に話題を変えてみる。
ストレートに疑問を投げ掛けてみた。
櫂くんは目をぱちくりさせて呆れ気味に答えた。
「お前が、一緒に食べようって言ったんだろう……」
「え?」
一緒に食べようって……。
記憶を巻き戻してみる。
「あっ」
「まったく……」
私はチョコレートケーキを持ってくる前のことを思い出し唖然とした。
そんな、あんな独り言を聞かれていたなんて……。
それでわざわざ来てくれたの?
やっぱり疑問だらけだけど素直に嬉しいな。
私はパソコンの乗る机に置かれたお皿を手にし、フォークでケーキを小さめに切った。
「た、食べる……?」
不安と期待が混じってしまう。
櫂くんは何も言わずに小さく口を開けた。
そのあまりにも無防備であどけない表情にいろんな意味でトキメいてしまう。
ケーキをそっと口へ入れてみる。
櫂くんが料理上手だったことを思い出しちょっぴり不安になった。
「どう、かな……」
ケーキを飲み込むと、櫂くんは柔らかく微笑んだ。
「優しい味だな」
「おいしい?」
「ああ」
嬉しくて嬉しくて勝手に顔が綻んでしまう。
一生懸命作ってよかった。
本当に櫂くんに受け取ってもらえたんだ……!
櫂くんは私からフォークを奪うとケーキを刺して私の口許へ運んだ。
「一緒に食べるんだろ?」
どうしよう。
もしかして私、とってもしあわせものなんじゃないかな。
絶対に叶わないって思ってたのに、これじゃあもっとすきになっちゃうよ。
櫂くん、だいすきだぁっ……!
心の中でそう叫びながら、私はケーキの甘さに微笑んだ。
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まさかの夢文。
コメントに「私も櫂くんにチョコをあげたい(もらいたい)」というものがちらっとあったので、おまけという形で書いてみました。
この子病み気味かもしれませんね!!ww
最後までお付き合いくださりありがとうございました!
2012.02.20
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