三和くんの指と一緒にナカの液体が流れ出た。
折角の中出しなのに最後はいつも空っぽにされてしまう。
僕はこの瞬間が嫌で嫌で仕方ない。
仕方ないけど抵抗はしない。
虚しさを感じながら天井の模様をぼうっと見つめるだけ。
三和くんの臭いがする枕を抱えて寂しさをまぎらわせるだけ。
「よぉし。キレイになったぞ」
ぽん、と太ももを叩かれ僕は上体を起こした。
「ん、ありがとう」
完全に三和くんが出ていってしまった僕の身体。
涙が零れないように気を付けながら、丁寧に制服を着込む。
冷えたワイシャツが僕を現実へと引き戻した。
「帰んのか?」
ネクタイを整えながら三和くんが言う。
「うん、塾があるから。……それとも帰らないでほしい?」
三和くんの表情は変わらなかった。
何の返事もなくて、僕はそれをNOととった。
帰ろう。
三和くんの部屋を視界から消し、ドアノブに指をかける。
冷たかった。
引きとめてよ……。
「俺、決めたんだ」
僕がここに留まる理由をくれる声。
振り向きたかったけど、なぜか、恐くてできなかった。
「何?告白でもするの?」
何となくわかってたんだ。
いつか、ううん、近いうちにこうなることが。
いつも気になってた。
僕を抱いてるとき、三和くんは僕のことを見ない。
目を瞑って、心だけ何処かに行っちゃってた。
どんなに僕が乱れても、残っていたのは身体だけだった。
「三和、好きだよ」
「へ?」
「似てたでしょ」
「……………」
意地悪した。
僕が先に言ってやった。
あいつよりも先に、三和くんが聞きたかったことばを!
でも、嘘じゃないよ。
三和くんだって知ってるでしょ?
僕の、この押し潰されそうな気持ち。
「今日で終わりにしようってこと」
またそうやって隠して。
行くんでしょ?
「どうして?僕じゃ気持ちよくなれないの?」
どんな顔して言ってるのか気になって気になって、勢いよく振り返ってしまった。
遠心力に負けた涙の粒が宙に舞った。
三和くんは思ったより近くにいて、びっくりしたけどその表情はなんだかスッキリしていた。
「今までごめんな」
三和くんの暖かい親指が目許に触れる。
嫌な暖かさだった。
「フラれたらまた僕のこと」
静かに首を振る三和くん。
「…………っ!」
パンッて、自分でもよくクリティカルヒットさせられたなあ、と思う。
すっごく綺麗にキマっちゃった。
これがドラマの撮影だったら一発オーケーだね。
三和くんは頬を押さえもせず、黙って視線を横にずらしていた。
どうせこの部屋には僕と三和くんしかいないんだからさ、少しくらい……最後くらい僕を見てくれてもいいと思う。
三和くんの視線ですらあいつだけのものなの?
「もう、いいよ」
僕は飛び出した。
外は寒かった。
ほっぺがピリピリする。
風が吹くたび目許が冷たくて、凍ってしまうんじゃないかと思った。
塾に行かなきゃ。
遅れちゃう。
僕は突然近道を思い出し、信号の角を右へ曲がった。
---その先、公園です---
--------------------
櫂似はイメージで書いちゃいました。
2012.02.01
top