俺は後悔した。

この前三和の家に泊まったとき、三和が風呂に誘ってきたが、俺はそれを断り結局別々に入った。

なぜ三和の誘いを断ってしまったのか、こんなことになるのなら、どうせ他人に見られるのなら、俺は初めては三和がよかった。

今までそんなことを考えたことは一度もなかったが、今俺に起きていることすべての初めてが三和以外のやつに奪われてしまうことがどうしようもなく悔しかった。


やがて口内を侵し続けるモノが大きく脈を打ち、一層強く喉奥を突いた。

生臭くねっとりとした液体が流し込まれ、モノはずるりと引き抜かれる。


「っぅ、ぉぇ…、げぇっ……。」


汚い液体を体内に留めておくのが嫌だった。

気持ち悪くて、自分がおかしくなってしまう気がして、俺は盛大に嘔吐した。

びちゃびちゃと床に跳ねた吐瀉物が剥き出しの脚に付着した。

口の中が酸で充満したが、それが汚く青臭い臭いを打ち消していて、俺は気休め程度に安堵した。


しかしそれも束の間、呼吸が整わないうちに後孔に痛みが走った。

何かが乱暴に中で蠢き、すぐに出ていく。

すかさず固くて熱いものが入り口に押し付けられ、俺は腰を引いた。

が、それも無意味な抵抗ですぐに固定されてしまう。


「い、やだっ……!頼む、それだけは、やめて…くれ……。」


痛いからとか怖いからではない。

ただただショックだった。

これから先ずっと俺の身体には他者を受け入れたという事実がつきまとい、二度と清い身体は戻ってこない。

汚く中古となった状態で三和と接していかなくてはならない未来を思うと、どうしてもそれだけは避けたかった。


「ッぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」


無情にも激痛が走る。

ぎゅうう、と胸が締め付けられるように痛くて、俺は次々に溢れる涙を止めることができなかった。

俺はきたない。

もう後戻りはできなかった。

三和の笑顔が脳内にちらつく。


どうして、どうして。

こんなときに限って俺を見つけてくれないの?


くらくらする。

バランスを崩した俺は、自らの吐瀉物の水溜まりに頬を浸した。

ツンとしたキツい臭いを拒絶するように、俺は口内に溜まった唾液を吐き出し続けた。


さっさと終わりにしてほしい。

早くイってしまえ……。


容赦なく最奥を突かれ、痛くて苦しくて仕方がなかったが、抵抗する気力も声をあげる体力ももはや残っていなかった。

とにかく時間が過ぎてほしいと思った。


(三和、三和……)


今度三和にあったとき、俺はどう接したら良いだろう。

意識しすぎてこのことがバレたりしないだろうか。

三和の顔をきちんと見ることができるのだろうか……。

その前に、俺は生きて帰ることができるのか……。

そういえばもうすぐ新しいヴァンガードカードの発売日だった。

一緒に開封式しようって三和が言ってた。

久しぶりにファイトがしたいと三和が言ってた。


(三和ぁ……。)


三和が遠く感じた。

手を伸ばせばいつも届く距離にいた三和が。

もう俺がどんなに叫んでもどんなに手を伸ばしても、三和のあの笑顔に触れることはできないような気がした。


「っぁ、ぁぁぁ……!」


ドクドクと絶望の液体が体内を満たしていく。

行為の終わりを告げる合図なのは確かだったが、それと同時に俺の中の大切な何かもガラガラと音を立てて崩れた。

パズルのようには戻せないくらいに粉々に。

俺の精神は限界を越え、俺はすべてを拒絶するように意識を手離した。




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――――い、……かい。


「櫂!!」


眩しい。

チョコレートのような甘くて優しい香りがする。

頬が暖かい。


「おいっ!?……大丈夫か?」


重たい瞼を持ち上げると、そこには不安げに瞳を揺らす三和の顔があった。


「あっ、あっ……!」


身体の力が一気に抜ける。

ついでに涙腺も思いっきり緩んで、ぼろぼろと涙が溢れた。


「すごい汗……、お前、うなされてたぜ?」


うまく言葉が紡げない。

身体が言うことを聞いてくれない。


(三和に、触れたい……。)


三和は俺の思考を読んだように、俺を抱き起こし涙に濡れる顔を自分の暖かい胸元へ押し付けた。

三和の体温とふんわりした匂いが全身を包み俺はすべてを理解した。



そうだ。

放課後、三和にテスト勉強をしようと誘われ三和の部屋に来た。

三和の集中力はすぐに切れてしまって、俺に提出しなければならないワークを託してひとりコンビニに出掛けてしまった。

3問くらいは埋めてやろうかとシャーペンを手にしたが、今日はまだ昼寝をしていなかったことを思いだしベッドを借りることにしたんだ。

思いの外寝心地がよくて、それで、俺は……。


(夢で、よかった……。)


俺は三和の服で涙を拭った。


「風呂貸そうか?」


平静を装っているのがバレバレだ。

俺の額に張り付く髪を払う三和の指が微かに震えていた。

こんな俺を見てしまったら困惑するのも当たり前だと思う。

俺は三和の肩を借りて立ち上がった。


「三和も入るだろ?」

「へ……?ぁ、ああ、入る入る!!」


本当に最悪な夢だった。

二度と同じ夢は見たくないし、思い出すのも嫌だ。

だけど、そんな最悪な夢によって気付いたことがあったのも事実だ。

それはまだ三和には秘密にしておきたいこと。


---近すぎて見えなかったこと---


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全体的にぽやーっとイメージしにくい感じに読んでいただければと思います。
2012.01.07




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