レンに変態だと思われたかもしれない。

ショックで涙が溜まる。

きゅ、と目を瞑ると行き場をなくした涙が粒となって目頭に溢れた。

瞼に暖かくて柔らかいものが触れ、近くで感じる息づかいに、俺はレンにキスされたとすぐにわかった。

はっとして目を開けたときにはすでにレンは定位置に戻っていた。


「こっちは問題なさそうなので、うつ伏せになってくれますか?」


俺を気遣ってのことなのだろうか。

とりあえず前を隠せる体制になれるため、俺は言われた通りうつ伏せになった。

しかしレンは「あ」と手を鳴らして紅い髪を揺らして言う。


「やっぱり四つん這いで。」

「えっ……。」


気遣いとかそういうのではないと思った。

レンはただ俺を検査してるだけ。

さっきよりも恥ずかしい体制にならなくてはいけないと思うと身体が動かない。

不安をわかってほしくて肩越しに振り返ると、レンはにっこりと微笑んだ。

なぜだろう。

いつもは暖かくて安心するレンの笑顔が急に怖くなった。

ぶんぶんと頭を振って何度も思い直す。

俺を想っての行為だと。



レンの強い視線が集まる中、やっとのことで四つん這いになる。

レンは俺の後頭部をぐ、と押した。


「もう少し腰をあげてください。」

「やっ……。」

「嫌?」


俺は初めて抵抗した。

カチャン。

金属がぶつかる音がすると同時に、手首には冷たい感触。


「なっ……!?」


素早い動きで、俺の両手首はベッドのパイプへと繋がれてしまった。

背中に寒気が走る。

消毒液の臭いがいつもより鼻に付いた。


「暴れないでくださいね。これは、検査なんですから。」


声は間違いなくレンのものなのに、別人のような気がした。

表情が見えないのがさらに不安と恐怖を煽る。

どうしようと考える間もなく、アナルには鈍い痛みが走った。

何か入れられた。


「ッぁぁぁ……。」


細くて冷たいそれは内壁を掻き分けるように奥へ侵入してくる。

わかってる。

レンの指だ。

優しく俺を撫でていた指が、もっとも触れられたくないところへ躊躇いもなく挿入されている。

目眩がした。


「キツいですね……。」


ずるりと指を引き抜かれると、何かをそこへ垂らされる。

とろみのあるその液体は消毒液の臭いに甘い香りをプラスし、異様な雰囲気を作り上げた。

アナルから外れた液体は腿を伝いシーツを汚し、また俺のぺニスを遡って、まるで鈴口から漏らしているかのように滴った。


「ひっ……!」


また指が入ってくる。

さっきよりもだいぶ滑らかだった。

すぐに2本目も入れられ痛みが大きくなる。


「ったい……。痛、い……。」


俺の言葉は届かなかった。

指はバラバラに動きだし、内壁を余すところなく探った。

時折出し入れされ、にちゃにちゃと水音が響く。

すごく自分がいやらしくなった気がした。

悪いことをしてるように思えた。


「ありましたよ。」

「ふ、ぇ…?」

「ヴァンガ脳の原因です。」


レンはちゃんと、原因をつきとめてくれたようだ。

俺はちょっとでもレンを疑ったことを後悔した。

何を怖いだなんて思っていたんだろう。

自分だけに疚しい気持ちがあったのかと思うと居たたまれなくなる。


「治療しますよ。」

「ん、わかっ、た……。」


俺はそれを悟られないように返事をした。

途端、身体がビクンと跳ねた。

不自由な手でシーツをぎゅっと掴む。


「我慢しなくていいですよ。」


これがヴァンガ脳の原因ってやつなのだろうか。

レンはアナルに入った指で、ある一点を何度も刺激した。

そこを擦られるたびに熱くて、内壁ががうずうずして、それで、気持ちいい……。

俺はレンがやり易くなるように、引き気味だった腰を高くあげた。

やり易くなるようになんて言い訳かもしれない。

とにかくもっと治療してほしかった。


「んっ、……ぁ、ぁあっ…!」


今までに味わったことのない快感だった。

快感なんて言葉を使うのは間違っていると思う。

治療されてこんな気分になってしまうなんて本当に自分は変態だと思った。

しかし、わかっていてもそう思うしかないほどの感覚だった。


「気持ちいいですか?」


少し楽しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。

そういえば乳首に触れていたときにもレンは同じことを聞いてきた。

もしかしたらヴァンガ脳という病気を治すには、こういう風に気持ちよくなってしまうのが普通なのかもしれない。

とはいえ素直に答えてしまうのもやはり恥ずかしいため、俺は「少し」というイエスに取るには不十分だがノーではないような返答をして誤魔化した。


「指、増やしますよ。」

「っん……。」


入り口が更に広がる。

先程よりも強く激しく気持ちいいところを刺激され、俺は声が漏れるのをどうにもできなかった。

だんだん痛いのか気持ちいいのかわからなくなってくる。

唾液がシーツに染みた。

おかしくなると思った。


「ぁあ゛あ゛あ゛!!レンっ……!やば、…俺ッ!!ゃ、んぁぁっ…!」


身体が震える。

嗅覚も聴覚も麻痺したみたいだった。

一瞬、この部屋に立ち込める臭いも、手首を拘束する手錠も気にならなかった。


「――――――ッ!!!」


大量の精液がシーツをより白く染め上げた。

頭がくらくらする。

熱くて熱くてなにも考えられない。


「よかったですね。無事治療は終わりましたよ。」


俺は朦朧とする意識のなか、瞬きで頷いた。






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「レン、いるか。」

「どうしました?」


奥の棚を整理していたレンが振り向く。

相変わらず保健室には消毒液の臭いが漂っていた。

俺はベッドのカーテンがすべて開いているのを確認し、一番奥のベッドに座った。

ふかふかでシーツの手触りが心地よい。


「調子が、悪くて」

「顔色はいいんですけどね。」

「…………。」

「……ヴァンガ脳ですかね?」

「………そうかもしれない。」


レンは鍵を閉め、カーテンを引いた。


「じゃあ、検査しましょうか。」


消毒液に甘い香りが混じりあった。


---甘い消毒液---



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ヴァンガ脳とかww
レン先生のセンスやばいですね(押し付け)
2011.12.28





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