消毒液の臭いは嫌いではない。
特に医薬品が好きだとか、病院が好きだとかということはない。
ただ保健室は学校の中でも孤立しているような気がして俺にとっては居心地が良かった。
だから、そんな落ち着ける空間と消毒液の臭いが結び付いているのだと思う。
俺はシャツのボタンを外し熱っぽい身体をレンに見せた。
レンは所謂保健の先生だが、俺がよく保健室にくるせいか、他の生徒と比べて俺と先生との仲は親密だった。
親密といってもたまに悩みを相談したりする程度でそこまで深い関係ではない。
とはいえいつの間にか俺は先生を名前で呼ぶようになっていた。
しかしながら先生と生徒という距離はきちんと保たれており、無理に相手の領域にお互いに踏み込まないことが俺たちの不思議な関係を成り立たせていた。
それでも俺はレンを心から信頼している。
普段特定の友人としか話さない俺でもレンに悩みを相談できたことが何よりの証拠だ。
悩みといっても次のテストが面倒だとか清掃の時間が憂鬱だとか取るに足らない程度のものばかり。
しかし俺はレンを信頼し過ぎていたのかもしれない。
だから俺は何の疑いもなくレンの言うことを聞いてしまった。
「どうなんだ……。」
「うーん、たぶん病気ですねこれは。」
レンが俺の胸に耳をあてながら言った。
レンくらいのレベルになると直接心臓の音を聴いた方が色々わかるらしい。
紅い髪が胸にあたってくすぐったい。
「病気?」
「ヴァンガ脳かもしれません。」
「…ヴァンガ脳?」
レンが言うには、ヴァンガ脳という病気は進行が進むとかなり深刻なものになるらしく、少しでも早い処置が必要だという。
ドアに鍵をかけたレンは、俺をベッドへ行くように促し念のためベッドのカーテンを閉めた。
俺がベッドに横になると、レンは俺の額に自らの額をくっつけた。
「熱もあるようですし、早速検査しますよ。」
「あ、ああ……。」
ただの風邪だと思っていたため、重大な病気かもしれないと告げられたのには動揺が隠せない。
これからされる検査に検討がつかず、俺は不安げにレンを見上げる。
それを察したかのようにレンは微笑むと俺の頭に優しく手を置いた。
「ヴァンガ脳はちょっぴり厄介でしてね。原因がどこにあるかは人によって区々なんです。まあ、僕に任せてください。」
俺は促されるままに口を開き、口内を見せる。
レンのひんやりした指が舌を挟み、少し痛いくらいに引っ張られた。
レンの深紅の瞳が俺の舌をじっとを見つめ、時折目があってしまい恥ずかしくなる。
しばらくそうした後「ここは大丈夫そうですね」とレンは呟き俺にシャツを完全に脱ぐように言った。
「寒いですか」と気を使われたが、室内は十分暖かくなっており特に寒気も感じていなかったため、俺は首を横に振ってレンの指示に従った。
指で首をツツ…となぞられ、引き寄せられるように胸にたどり着くと、爪で乳首を引っ掛かれる。
「っ!?」
レンは俺の反応に少し驚いた様子で、さらに乳首を刺激してきた。
円を描くように押し潰し、痛いくらいに引っ張りあげ、その痛みを解すように優しく揉む。
元から熱くなっていた顔がさらに熱くなる。
いや、顔だけではなく、耳も首も熱くなっている。
恥ずかしい。
俺はそう感じつつもレンには言えなかった。
ジンジンするくらいに両方の乳首をいじり倒される頃には俺の息はすっかりあがっていた。
「気持ちよかったですか?」
「そんなわけ、ないだろう……。」
乳首が痺れて、全身が熱くて、腰が疼くような感じがした。
これを気持ちいいという感覚ならそれは納得だが、自分だけでは判断できず俺はとりあえず違うということにした。
第一、気持ちよかったと伝えることはあまりにも恥ずかしすぎた。
検査で気持ちよくなってるなんてわかったら、レンは俺を変態だと思うかもしれないし今まで保ってきた関係も崩れてしまうかもしれない。
そんな風に思考を巡らせつつも、レンから気持ちよかったかどうかを聞いてきてるんだから正直なところを言ってしまっても別に問題ないかもしれないとも考えた。
一瞬「本当は少しだけ気持ちよかった」なんて遠慮気味に言ってみようかと思ったが、勇気が出ず俺はレンがいるのと逆の方向を向いてそれを悟られないようにした。
「触りますよ。」
レンは両手の指先を使って俺の脇腹を撫でた。
やっぱりレンの手は俺の体温よりも低かった。
感触を確かめるように脇腹を触っていた手は徐々に腰や臍へ下がり、ベルトを外し始める。
「や、ちょ……。」
思わずレンの手首を掴む。
「? どうしました?」
「必要あるのか……。」
まさかそっちまで検査されるとは思っていなかった俺は、レンを信用していないわけではないが、確認しておきたかった。
レンは眉を下げ、手首を掴む俺の手を優しく退けた。
「言ったでしょう。ヴァンガ脳の原因はどこにあるかわからないって。」
「だが、」
「他の人に見られるよりはマシでしょう。」
するすると下着ごとズボンが降ろされていく。
返す言葉もなく、俺は露になっていく下半身を見つめることしかできなかった。
素肌にシーツのさらりとした感触が伝わる。
初めて性器を他人に見られた。
羞恥はあったが、特にコンプレックスも生理現象も起きていなかったことが救いだと思った。
レンは俺を完全に裸にすると、ベッドの上にあがった。
キシ、とベッドが鳴る。
「そんなに見るな……。」
あまりにもまじまじと観察され、反射的に足を曲げてそこを隠す。
「ふふっ、僕のも見ますか?」
困ったようにそう言われ、なんとなく申し訳ない気持ちになった。
レンは俺の病気を診てくれようとしているのに……。
俺が恥ずかしがるなんて、レンからすれば信用されてないのも同然かもしれない。
「っ、すまない。」
おずおずと足を開くと、レンが性器に指をかけた。
明らかに自分の指とは違う感覚。
萎えた性器を持ち上げられ、裏側や付け根までくまなく視線が絡み付く。
余る皮を上げたり下げたりして普段はあまり外に曝されることがない部分まで調べられた。
「ッ……はぁ……。」
緊張で腿が震える。
次にレンは玉を片方ずつ持ち上げ、重さを量るように手首をしならせた。
自分でさえほとんど触れないような場所を当然のように弄られ、危機感か緊張感からかはわからないが心臓がドキリとした。
それと連動するように身体もピクリと反応してしまう。
さらに、レンは親指と人差し指で鈴口をピ、と開き息を吹き掛けてきた。
「ひぁっ!?」
「おや?」
ついに、俺の性器まで熱を持ち始めてしまった。
あっという間に勃ちあがったそこは十分すぎるくらいに存在を主張している。
言い訳のできない事態に俺は赤面した。
「男の子ですから、ね。」
わざとらしくつけられた「子」が余計に俺の羞恥を煽った。
「見…ないで、ほし、い……。」
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