俺だ。

俺は交換に使えるようなものは何も持っていない。

ジュンにとって俺はどれ程の価値があるかはわからないが、俺が交換に出せるものは自分自身くらいしか思い付かなかった。


「俺と交換でどうだ。」

「え。…え!?」

「勘違いするなよ。その生クリームに見合う価値のことを俺がしてやると言ってるんだ。」


それから、今すぐには時間の都合上できないことも伝える。


「な、なるほど……。」


ジュンが異常なほどの動揺を見せている。

交渉不成立なのだろうか。


「気に入らないか?」


確認すると、ジュンは間髪いれずにそれを否定した。

そして生クリームを突きだして言った。


「その、これに見合う価値のことをするって言ったね?」

「ああ。」

「僕が決めちゃうよ?」

「もちろんだ。お前の思う価値でやらないと不公平だろう。」

「なんでも……いい?」

「俺にできることならな。」


途端にそれまで俺の手首を掴んでいた手が俺の頬をなぞった。

先ほどの動揺を微塵も感じさせないような強い瞳で真っ直ぐに俺を見つめてくる。

その瞳は吸い込まれそうなほどに深いバイオレットだった。


「楽しみにしてるよ、櫂。」


俺はジュンから生クリームを受け取ると大きく頷いて見せた。













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