12月12日。

今日はレンの誕生日だ。

夕方にはレンが家に来ることになっていて、俺は朝から準備に追われている。

何の準備って、もちろんパーティーだ!

本人にはこのことは秘密にしてある。

驚き喜ぶレンの顔を想像するだけで俺は夕方が楽しみになった。


「こんなもんだろう。」


賑やかとまではいかないが、飾りつけをする前と比べるとだいぶパーティーらしい部屋になった。

時計を見ると午前10時をさしている。

今からケーキを作り始めれば余裕で夕方に間に合うだろう。

俺は冷蔵庫を開け、材料を取り出そうとした……のだが。


「…………。」


数日前から、俺は今日に向けてケーキ作りの練習をしていた。

レンが好みそうな、甘くてそれでいて飽きがこないようなものを作ろうと試行錯誤を繰り返していたのだ。

試作品だし、それを食べるのは俺ひとりであるためかなり小さめのを作っていたのだが、まさか材料を使い果たしてしまうしまうほど練習していたとは思わなかった。

今すぐ材料を買いに行かなければレンが来るまでに間に合わない。

俺はマンションを飛び出しスーパーへ走った。
歩いてでも行ける距離にあるため走れば10分ほどで着いてしまう。

しかし、10分間も走っていられるような体力は持ち合わせておらず、結局後半はいつも通り歩いてしまった。

普段は人もまばらで静かなスーパー。

なのに、今日に限ってなぜかものすごい人だかりができていた。

群がる主婦たちの話を聞けば、どうも特売をしているらしい。

限定ものやタイムセールもあるらしく、しばらくはこの状態であることが予想される。

こういうときの女性というのは本当に強い。

この人混みをかきわけて、もし中に入ることができたとしても目当てのものを買える自信も無事に戻ってこれるイメージもわかなかった。


仕方ない、ここはあきらめるか……。


少し遠くなるがもうひとつスーパーがあったはずだ。

考えている時間はない。

と、向きを変えると50メートルほど離れたところに見慣れたシルエットがあった。


あれは……


アイチだ
カムイだ













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