鋭く風を切る音が店内に響いた。

柱の角が欠け、破片が散らばる。

ゆっくりと近づいてくる靴音がやけに大きく感じた。

もうここには俺たちしかいない。

ジュンが俺の肩を抱き寄せ完全に柱の陰となった。


「チッ、もう追ってきやがった……。」


柱越しに向こうの様子を伺いながら三和が呟く。

再び銃声が鳴り響き床をへこませた。

三和の右手が紅蓮に輝く。

陰から飛び出し、その手を前へ伸ばすと、紅蓮の光が掌に集まり巨大なヴァンガードサークルとなって具現化された。

同時に三和のデッキケースが光る。

またカードが白くなったのだろう。

ヴァンガードサークルのシールドに弾が跳ね返り、床へ転がる。


「三和っ……!」

「櫂!出てくんな!!」


普段の三和からは考えられない剣幕で叱咤され、出しかけた足を引っ込めた。

途端に俺の身体が宙に浮く。

ジュンが俺を向かい合わせに担ぎ上げたのだ。

ジュンは片手で俺の腰を固定し、柱の影が伸びる方へ一歩前へ出た。


「ジュン、後は頼んだ。」


シールドが増える。

ケースが光る。

激しい光が渦巻く中で三和の声は落ち着いていた。


「櫂を、守ってくれ。」



三和が俺たちとは逆の方向へ踏み出す。


「約束しよう。」


腰への締め付けが一層強くなった。


「やだっ、ジュン、放せ!!」


俺は直感的に悟ってしまった。

この先の三和の運命を。

そしてはっきりと自覚した。

自分の弱さを。

自分さえ守れない無力さを。


「ここは彼に任せるんだ。」

「ふざけるな!!三和を置いていけるか!放せっ、放せぇっ……!」


俺を固定していない方のジュンの腕が紫紺に淀む。

光が白く輝く度に高い金属音が反響した。

また一歩三和が遠ざかる。


「っ……!」


三和の声が遠くなる。


「櫂。」


それでも俺に呼び掛ける声はクリアに聞こえた。


「今言わないと後悔するって思うんだ。」

「え……?」


三和の瞳はシールドのその向こう、銃声を響かせる相手を捕らえていた。

俺の背後ではジュンが放った漆黒の闇が口を開けている。


「俺さ、」


三和が振り返る。


「お前のこと、」


苦しくて切ない表情。


「大好きだっぜ!!」


勿忘草を思わせるような三和の瞳はどこまでも澄んでいた。

一瞬時が止まったような静けさが俺を包む。

嘘だ。

だって三和は言ってた。

俺から絶対に離れないって。

一生側にいるって。

だから、信じてほしいって。


熱い滴が頬を伝う。


それを合図に時が一気に動きだし、三和の眩しい笑顔だけが俺の瞳に映った。



「ッ、三和ぁぁあああああああああああああ!!!!!」



俺が三和を呼ぶ声は虚しく闇にかき消されてしまった。


---逃走中---


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続きません。
こんな感じで逃走中妄想してたのでその場で書いてみました。
乱文すみませんorz
2011.12.21

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