櫂が慣れるまでこのままでいようかと思ったが、そんな風に挑発されてはたまらない。
無意識なのだろうが、不規則な収縮は、早く先がしたいと言っているようだった。
「動き、ますよ……。」
「ゃ、待っ……っああ!!」
櫂の言葉も聞かずにひと突きする。
抜けそうなくらいに腰を引くと、また一気に奥まで貫いた。
「っぁ゛あ゛!!!」
櫂の目から涙が溢れる。
僕は理性のままに何度も何度も内壁を擦りあげた。
「ど、ですか?櫂……っ!!記憶は、戻り、そうですか……?久しぶり、でしょう?僕のをくわえ込むの、はっ……!」
「わか、んない…っ!わかんないよぉお!!んっ、あっ!!」
嘘だからこその興奮なのかもしれない。
初めてなのに僕と何度も行為をしてきたと思い込んで必死になっている。
痛みをどうにか快感に変えようと必死になっている。
そんな、普段の彼にはありえないギャップが、どうしようもなく僕を興奮させた。
「櫂っ…、好きです……!大好きですっ……!」
自分で言って気持ちが高ぶる。
「レンっ……、お、俺も……っ、ふあっ!!すっ、ん、好きぃ…、っ……!」
その言葉を聞いた瞬間、僕のぺニスは一際大きく脈打った。
「なっ、レンっ…!?」
それを合図とするように激しく奥を突く。
肌がぶつかり合い、ベッドが軋む。
首筋に噛みつけば、櫂の喉が跳ねるように仰け反った。
「ぅあっ!ど、しよ…、レンっ!!俺っ、ぁっ!なんかっ……!」
「イキそうですか…?っ、ぼ、くも、んっ……、そろそろです…っ…。」
水音が激しさを増す。
「レンっ…!俺っ……!も、っ……!!」
「いいですよ、もっと、名前っ、呼んでください……!櫂っ…!」
「レ、ン!レンっ!!レン……!!レンっっ!!!」
ごぷ……。
息が詰まる。
全身が熱い。
視界がチカチカする。
「っぁぁ……!」
「んっ……!」
身体を支えていられない。
僕は櫂の上に倒れた。
荒い息づかいが耳元で聞こえる。
しっとりとした櫂の肌の暖かさが心地いい。
しかし自分のものがまだ櫂に入ったままだということと思い出し身体を起こそうとした。
その瞬間、櫂の手が僕の髪に触れる。
「もう少し、このままで……。」
「櫂……。」
嬉しい。
僕は櫂の指と自分の指を絡めた。
「……レン。」
「どうしました?」
自分でもびっくりするくらいの優しい声だった。
僕もこんな風に話せたのか。
「俺、はやく記憶が戻るといいな、って思ってる。」
「なぜ?」
「……、レンのことが、好きっていう気持ちとか、思い出とか……ちゃんと知りたいから……。」
「……ふふ。ゆっくりでいいですよ。」
そう、ゆっくりでいい。
記憶が戻ってしまったら、僕と君が恋人だなんて、君が僕を好きだなんて、嘘になってしまうのだから。
end
2011.12.01
←
top