「もうこんな関係終わりにしよう」
自室で雪男と向かい合い、俺は開口一番に言い放った。
微かに雪男は瞠目したが、それは一瞬で瞳には俺の狼狽する顔が映る。
真摯な瞳が俺の心の中を見透かすようで、思わず視線を反らしそうになる。
俺はかたかたと震える身体をぐゅと握り、それに耐えた。
「雪男はさ、モテるし俺の代わりなんていくらでもいるだろ」
もう泣きたくなる夜を過ごすのは嫌だった。
俺を解放してくれ。
しかし、明るいトーンで言っても、冷たく凍えそうになるような視線が降り注ぐだけだけで、雪男は押し黙っている。
そんなことは構わず言葉を綴る。
「ホント羨ましいよ」
それじゃ、今からご飯作るからと足早にその場を立ち去ろうとするが、雪男の腕が阻みそれを許さない。
「どうした?」
動揺を悟られないように、何でもないような顔で尋ねる。
「なんでそんなこと言うの」
「え、いやだって彼女とかできるだろ?」
「何、彼女できたの?」
「いないけどさ…」
「だったらこのままでいいでしょ」
「だからって別に兄弟でヤる必要もないじゃん。それに、雪男だって女の子の方がいいだろ?」
「……だ」
「え?」
ぼそりと何か呟いたようだが聞き取れず少し寄ると、肩を思い切り押され背中が壁を打った。
鈍い痛みが身体を走り、抗議するように勢いよく顔を上げれば、雪男自身によって陰がかかり、視界が暗くなっていた。
「おい、何すんだ!」
「兄さんさぁ、何うだうだ考えてるの」
するり、と雪男の手が頬をなで、すべるように下に降りていく。
その掌には暖かさはなく、ただただ冷たい。
「気持ちよければ誰だっていいんだろ?」
「そんなわけねぇよ!」
ひどい言われようにかっとなり、声を荒げて否定すれば雪男が眉を寄せたのがわかった。
「俺は、俺は…」
雪男がいいんだ。
喉まででかかった所でハッとなり、言葉に詰まる。
こんなこと言っても雪男には意味をわかってもらえないんだ。
その事実が突きつけられ悲しくなり目頭が熱くなった。
きっと、今、ひどい顔してる。
俯き思索にふけった。
それはただの現実逃避で、俺はこの場から早く消えてしまいたくてしょうがなかった。
ちっ、と雪男が小さく舌打ちしたことにより一気に現実に引き戻され雪男を見る。
拒絶を態度で表すように雪男の胸を手で押した。
「やっぱりいやだ。終わりにしたい」
意を決してそう言うと雪男の視線が一層鋭く俺を刺すのを感じたと同時に、雪男は乱暴に俺を掴み、ベットに放り投げた。
ぼふっと身体は沈み込み、体重にスプリングがぎしと音を立てる。
起き上がる前に雪男はすばやく俺の両腕を頭上にまとめ、ネクタイできつく縛る。
拘束され、眼前の雪男に怒鳴り声をぶつけることしかできない。
「やめろよ!雪男!」
上に跨り見下ろす雪男は、普段あまり使わない乱暴な言葉で俺を刺す。
「うるせぇな。黙れよ」
「…っ!」
「兄さんは僕に抱かれてればいいんだよ」
雪男の言葉にひゅっと喉が鳴った。
喉がカラカラする。
じんわりと目の縁がにじみ、頬を涙が伝い、シーツにシミを作った。
ひく、と鼻が鳴るだけで言葉がでない。
「僕を煽ってるだけだってわかってる?」
ガラス越しの瞳にぎらぎらした欲望が垣間見え、見たくなくて顔をそらした。
雪男はTシャツを乱暴にたくし上げ、胸にかぶりつく。
激しい愛撫は痛みしかなかったが、少しずつ快楽を拾い始め自分の身体にうんざりする。
「ふっ…は…」
「ふふっ、痛めつけてるのに感じてるんだ」
言葉通り俺自身は熱を持ち始めてズボンの上からでもはっきりと伺え、羞恥に顔を赤くする。
そんな様子を冷静に見つめていた雪男はズボンのチャットをおろし始める。
「兄さんはさぁ、淫乱だから別に慣らさなくても大丈夫だよね?」
にこりと、笑うが目は全く笑ってなどいなかった。
ズボンと下着を一緒に乱暴に脱がされ、冷たい空気に当てらた身体はぶるりと震えた。
本当に慣らさないつもりなのか。
俺は目を見張り、信じられないという視線を送る。
そんな視線はなんて見向きもせず、雪男は自身を取り出した。
いやだ、と発したつもりだったが、それは空気が外に吐き出されるだけで形を成すことはなかった。
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110514
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ドSモード!
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