※アマ→燐→雪男
雪燐前提アマ燐?
その部屋には2つの呼吸が存在した。
1つは部屋の主、燐のものであり、もう一方は雪男ではなくアマイモンのものだった。
「あんな奴のどこがいいんですか」
「あんな奴って言うな」
アマイモンを見ずに、きっぱりと切り捨てる。
並んでベットに腰かけているが、包む空気は和やかではないようだ。
「お前にはわからないよ」
ぽつりと溢すように呟く。
一体何がわからないと言うのだ。アマイモンは燐をじっと見詰る。
そんな中、燐ははぁと長いため息を漏らした。
「つか、なんでいるんだよ」
「会いたかったからですよ」
まじまじとアマイモンの顔を仰視したのち「そう」と、そっけない返事をする。
2人とも押し黙り、静寂が支配する。
だが、不思議と居心地は悪くない。
そんな空気を打ち破ったのは燐の諦めを含んだような声だった。
「どうしてこうなっちゃたんだろうかな」
顔を上に向け、天井を見る。
しかし、その瞳は天井など映していなかった。
「報われない恋をして、おれも、お前も」
唯一映るのは雪男姿。
アマイモンは視線を燐から切らず、いい放つ。
「それでもボクは燐が好きです」
芯の通ったその言葉に燐は目を見張り、ははと乾いた笑みを漏らす。
「ありがとうな、アマイモン」
燐は感謝の意を述べるが、気持ちなんてこもっていなかった。
そんなことはわかっていたが、アマイモンは形だけでも聞いてもらえただけで嬉しく思った。
元より伝わるなんて期待いないのだ。
何を言っても届かないのだろう。燐の、弟の言葉以外は。
「ごめんなさい」
手を伸ばし、片手で燐の両目を覆う。
燐は突然視界がシャットアウトされ身をびくりと揺らすが、それがアマイモンだと知ると安堵の息を漏らす。
アマイモンは吸い込まれそうな透き通った蒼い目が見えなくなるのは少し残念だと思った。
「どういうことだ、それ」
「今からボクいけないことをします。イヤだった抵抗してください」
「バカ、どうせ俺が嫌がることなんてしないだろ」
燐の口元が綺麗な弧を描く。
覆った手の奥で燐は目を細めた。
片手はそのままにアマイモンは燐の唇に触れるだけのキスをする。
「んっ………」
僅な隙間から唇を割り裂き口内に侵入する。
燐の口内は予想よりも熱く舌がとろけそうだ。
恐る恐る差し出してくる燐の舌を絡めとり、くちゅりと唾液が絡まる音が互いの鼓膜を刺激する。
「はっ……ん、う…」
深き激しいキスはまるで欠けたものを埋め合うようでもあり、傷のなめあいのようでもある。
息が苦しくなったのか燐はぷはっ、と大きく口をあけ酸素を吸い込む。
同時にアマイモンは誘っているようにてらてら光る唇にかぶりつく。
「はっ……雪男ぉ…」
燐は見えない視界と酸欠でぼんやりとした頭によって、キスをしているのが雪男だという錯覚に陥った。
違う男の名前を呼ばれたのは、わかっていたが悔しくアマイモンは眉をよせた。
代わりでもなんでもいい。
その名前は聞こえなかったことにして、再び貪りようにキスをした。
部屋に響くのは、まるで獣のような忙しない呼吸といやらしい水音だった。
きっとその時2人の何かが死んだ。
否、すでに死んでいた。
110507
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報われない話。
どうしよう、いままでのアマ燐小説全部アマがかわいそうだ!
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