気だるい身体を叱咤して、兄さんと二人で住む自室を目指す。
その足取りは決して軽いとはいえず、溜まった疲労が窺える。

もう時刻は真夜中である。
寝ているだろう兄さんを起こさないように音を極力出さないようにして扉をくぐる。
ベットと見れば案の定気持ち良さそうな寝息を立て、腹を出して寝る兄さんがいた。

「ああ、布団が落ちちゃってるじゃないか」

くしゃくしゃになり床に落ちている布団を拾い上げる。
相変わらずだと、ため息もつきたくなるが、幸せが逃げるだとか聞いたような気がしたのでやめておく。


思考を現実に戻し、布団をかけようとした所で手を止める。
無防備にさらけ出す真っ白な肌が視界に入り込みに、ごくりと喉が鳴る。

思うが侭に、するりと線をなぞるように手を這わし、感触を楽しむ。
真っ白な肌をひどく汚したい欲望が奥から湧き上がる。
自分のものだと印をつけて、いや、それよりも誰の目にも触れらないように閉じ込めたい。
できるはずがないのに、と自嘲気味にささめき笑う。



物心ついた時にはもう自分は兄に恋していると自覚していた。
だからといって兄弟以上の触れ合いをすることはなかった。
そんなことをしたらどうなるかなんて幾度と無くシュミレーションしたからだ。

結果だって?
そんなの単純。
嫌われる。
ただ、それだけだ。

だから自分の気持ちを曝け出すような行動はせず、いつも隠すように勤めていた。
嫌われて、今の関係が無くなるより今のままで満足だ。
そうやって、自分にいいきかせる。

それがどうした。
今日の自分は少々可笑しいようだ。

不味いことはわかっているのに止まらない。
疲労のせいだろうか、判断力が鈍っているのか。
ただこの肌に印をつけたくてたまらない。
少しくらいいいだろうか。

ぐっすり眠る兄さんは起きる気配なんて微塵も感じさせない。
しょうがない、不可抗力だ。

唇をよせ、ちぅと強く吸う。

真っ白な肌の中存在する赤い自分印に気分が高揚するのがわかる。
暴走しそうになる欲望を微かな理性で押さえ、視界から排除するように兄さんの身体を布団で覆う。

自分のものになんかなりっこないのに。

(馬鹿だなぁ)

どうせすぐに消えてしまうのだ。
キスマークなんて。






キスマークはすぐに消えるから






110504
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続きます!
ムラムラするのを我慢!
頑張れ雪男!

(title)確かに恋だった

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