深く、深く

「骨にまで触れたいくらいだ」

 きっかけは些細な事だった。友人から恋人へと昇格した私達の関係は、いつまで経っても進展する事がなく、恋人らしい扱いをしてくれないセノへの不満を、私が吐き出したのだ。確か、私の事本当に好きなの?と言った。そして数秒の静寂の後、セノの口から放たれた言葉にまたしても静寂が訪れる。ほ、骨?意味が分からず、喜んで良いのか、怒って良いのかも分からない。どんな反応をするのが正解なのか分からなくて視線を泳がせる私の顔に、セノの指が触れる。セノは私の顎を掴んで自分の方を向かせると、もう一度ゆっくり唇を動かした。

「聞いているのか?骨にまで触れたいくらいだ」

「……ごめん、どういう事?」

 こんな場面でジョークを言うような男ではない事くらい分かっている。だから尚更分からなかった。正直にセノに問いかけると、セノは伝わっていないだと?とでも言うかのようにたじろいだ。

「だから、俺が…」

 セノは言いにくそうに言葉を切ると、一度天を仰いで、そして大きく息を吸い込み、吐いた。そんなセノの行動を目を丸くして見ていると、セノは覚悟を決めたかのように私の目をジッと見た。心なしかセノの顔がほんのり赤いような気がする。

「お前の骨にまで触れたいくらいお前の事を好きだと言う事だ」

「……骨?」

「……抱き締めたり、それ以上の事をするだけじゃ物足りないって事だ」

 セノはぷいっと顔を逸らすと、片手で自分の顔を覆った。そっぽを向いたセノの耳がまるで林檎のように赤く染まっている。そこまで言われてどういうことだと聞ける程察しは悪くない。なんだそれ。それってまるで…

「私の事がすごく好きって事?」

 言葉にしたら私まで顔が熱くなってきた。そっぽを向いたままだが、セノの瞳だけが遠慮がちに私の方を見る。そして、セノは目を伏せると小さく頷いた。

「最初から言っているだろう」

 そんなんじゃ、分かんないよ。堪らず目の前のセノを抱き締める。セノはジョークだけじゃなくて、愛の言葉も分かりにくいみたいだ。

 
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