宮兄弟と幼なじみ2
「なんで加隈って関西弁喋られへんの?」

クラスでいつも賑やかで大体中心にいるような男の子に突然聞かれた。なんでって言われても、私は兵庫出身じゃないしなあ。

「私東京生まれで東京から引っ越してきたから。話せるかもしれないけど今の方が話しやすいんだ」
「東京おったん?」
「うん、おじいちゃんとおばあちゃんと、お兄ちゃんは東京住んでるんだよ」

なんやのそんなこと聞いてー、と一緒にいた友達が横から口を挟む。この子とは初めて同じクラスになったから知らなかったのかもしれない。確かにこの学校にはこの地域で生まれた子が殆どだし、多分転校生がいたとしても大阪とか京都とか、近くの都道府県からなのかも。全然標準語を聞かないから私は目立つのかな、と思った。呑気にそんなことを考えていたら、次に浴びせられた言葉にピシリと固まった。

「やって、その喋り方、変!」


……変って。変って何?


「……変じゃないもん」
「なんやのほんまに!失礼やで!」
「加隈だけ俺らと違う話し方やん!おかしいやろ」

おかしいって何?東京じゃみんなこう話してたもん。侑と治と初めて会った時、みんなが今話してる方が聞いたことなくてびっくりしたくらいなのに……!


『『標準語……!かっこええなあ……!』』


あ。


「良いでしょ」
「は?」
「標準語、かっこいいでしょ。本当は羨ましいんじゃない?」

笑ってそう言ってやればその子は怯んでた。ざまあみろ。

「なんやねん東京から来たってだけで調子のんなや」
「うっさいわ、お前が調子のんなや」

再び横入りしてきたのは今一緒にいた友達とは違う、男の子の声だ。見れば、後ろの方から治が面倒くさそうに座りながら一見眠たそうなそのたれ目でこちらを見ていた。

「ひかりが好きならそんなくだらんことで話しかけんのやめればええやろ、ダッサ」
「なっ、んでそうなんねん!!別に好きやない!こんな変なやつ!」
「私だって変とか言ってくる人のことは好きじゃない」

ちょっと赤くなって大きな声を出すその子に向かってキッパリ言い切ってやればもうええ!とか言ってどっか行っちゃった。ほんと、治の言う通りダサいなあ。いつの間にか私と友達のところへ来た治に一応お礼を言う。

「治ありがとう」
「なんもしとらん」
「あいつひかりちゃんのこと好きやったん?アホやな」
「そうなんちゃう?知らんけど」
「「知らんのかい」」

思わず友達と突っ込んでしまったその一言は完全に標準語なんかではなくなっていた。最近本当に無意識で関西弁が出てしまうことがちょっと増えたのは気のせいじゃないみたいだ。

「やっぱひかりはいつも通りやないとそっちのが変やわ」
「混ざっとるね」
「両方喋れるようになってきちゃった」


別に話し方なんてどっちでもいいと思ってる。たださっきみたいに言われたら嫌だと思うのは当然で。それでも侑と治が初めて会った日に言ってくれた一言がお守りみたいになった。ふたりがそう言ってくれるなら、あの子の言うこの変な喋り方のままでいいかなって思った。




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