宮兄弟とマネージャー 1
陽射しが柔らかくなり暖かく感じる頃、桜に見守られながら私は中学生になった。もちろん侑と治と同じ中学校だから入学式には宮家、加隈家でぞろぞろ向かって正門で写真撮ったりなんかした。ママとお母さんがきゃっきゃと騒いでいたから後ろに並んでる人に申し訳なくて父親組がそれをおだやかに咎めて、私たち子供組は呆れたように見ていたのが私たちらしいワンシーンだった。
そんな初日もあっという間に過ぎて侑と治はさっさとバレー部に入部して練習に参加している最中、私も一緒に引っ付いて体育館を訪れたけど女子バレー部入部希望者と間違えられた。まあそりゃそうかと納得する。でも私はバレーをやりたい訳じゃない、バレーには関わりたいけど男子バレー部の方で裏方に尽力したいからここに来たんだけどなあ。
そう思って昼休み、顧問の所へ行けば一言、マネージャーは募集してないと言われた。

「募集してないって、なんでですか?」
「してないっちゅうか、今までおったことないねん」

だから特に居なくても部活回るように1年がまずは裏方っちゅうのが普通の流れでなあとその人は言った。1年が裏方。つまりそれは、基礎を叩き上げる必要のある1年生が、雑用に時間を割いているということ、だよね。

「……あの、それなら尚更、マネージャーやりたいです」
「自分、バレーやっとったんやろ?あの双子と。そんならバレーやりたならないんか?女子バレー部もあるんやし」
「いえ、私はバレーはやりたいけど、選手としてじゃなくて裏方でバレーと関わりたいんです」
「でもなあ……うちやって別にただ部活やっとるだけのバレー部やないで。真剣に、勝つために毎日やってんのやけど」
「だからこそです。私、中途半端なバレー部なんか所属したくない」

そう言い切れば先生も黙ってこっちを見てくれた。目付きが少し変わったのが私でもわかる。ようやくちゃんと見てくれた。私だって真剣にバレーに向き合う覚悟がある。3年間あの双子が突っ走っていく様を後ろでサポート出来たら、それが私の1番理想のバレーへの関わり方だから。あいつらについて行くのにそんな生半可な気持ちじゃ到底追いつけない。

「……仮入部期間で決める、それでええか?」
「!はい!毎日朝練も放課後練も来ます」
「マネージャーなんて前例、ウチにはないからな、何が必要か何をすべきか、自分で考えて動きや。それが部のためになると俺が判断したら正式に入部を許可したるわ」
「分かりました!ありがとうございます!」



「ほんで今日正式に入部してええ言われたんか?」
「言われたー!」
「せやからあんなちょこまかあっちこっち動いてたんか」
「言い方トゲあるな、目障りみたいな感じやめてくれます?」
「……目障りやったな!」
「オイ」

約2週間、毎日遅刻せず朝練と放課後練と参加して、何が必要かそうじゃないのかちょっとずつ見極めて、私ができる範囲のことを邪魔にならない程度に取り組んだ。まあ最初のうちはミスったり怒られたりももちろんしたけど、それでへこたれるような私じゃない。凹みはしたし双子にちょっと愚痴ったりしたけど。それでも兎に角短期間でどうしたら顧問に認めてもらえるのか、何がバレー部のためになるのか徹底的に考え抜いた。おかげで勉強の方が疎かになったけどまあそれは後でいくらでも巻き直せるし、巻き直してみせる。お兄ちゃんにもたくさんアドバイスをもらったから後で報告しよ。

「これからまた3年間侑と治とバレーやるよ!」
「金魚のフンやん」
「誰がバレーやれって言ったんだっけ?」
「俺は言うてへん、ツムや」
「なんそれ、治だって同じやんか」

先にマネージャーがあるんやないと言ったのは治だ。私は絶対忘れないからね。

「そのうち敏腕マネージャーって言わせたるからな」
「小言言うやつがバレーにまで干渉してくるだけやんな」
「パシリさせたろ」
「パシリ言うな裏方や裏方!」


そんなこんなで私のマネージャーとしての生活が始まった。それがこの先環境が変わってもずっと続くなんてこの時は思ってもなかったけど、中学で男子バレー部に入部して真面目に取り組んで良かったなあと、今でも思うよ。




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